第2655話 73枚目:異常発覚
まさかのナージュの本体(工場)に異変ありとか聞いてないんだがー!? と思いつつ、ナージュ自身に自分の事をよくよく調べるというか何か変化が出てないか思い出してもらったところ
〈……そういや、ここ半年ほど妙に肩が回らねぇとかイラつく事が多かった気がすんな?〉
「気付きましょうよ。何で四十肩や更年期障害が出てるんですか神なのに」
〈あーあーあーうーるーせーえー〉
うるせぇじゃねーんだわ。更年期障害で通じるのかっていうのはともかく。
とりあえずその歯車は職人の人を呼んで交換してもらい、私が封印しておく。大事な証拠だからな。2つの色が混ざっているようにみえるが、改めてナージュが調べたところ、力としては1種類らしい。これで1体なのか。いや本当に2体いても困るけど。
その後工場内見学を続行し、そこから更に3つの歯車を交換して封印する事になった。1つは完全に染まり切って、隣の歯車に浸食して行っていた。ダメじゃねーか(2回目)。
交換を頼んだ職人さんは終始「?」って顔をしていたが、まぁ、私が見えてないんじゃそういう反応にもなるだろうな。歯車も、通常視界だと何も問題ないし。
「工場長、この部品なんか問題が? 持った感じ大丈夫そうっすけど」
〈物的な問題じゃねぇからな。他の神の力が混ざってんだ。しかも段々広がっていきやがる。俺も気付かないぐらい少しずつな〉
「えぇ? 確かに新しい工場から納品されたやつばっかっすけど、あそこは確か人間の力だけで作ってる筈っすよ?」
ん?
〈あー、そうか。最近変えた奴だったな。ムースルイユだったか?〉
「っすね。まぁ俺には力っつーのは分からんすけど」
〈……変えたのが半年前だから、時期的には合ってんだよなぁ。とはいえ、流石に納品された時には確認して、その時問題なかったから交換した筈なんだが〉
「入れる時の選別厳しいっすもんね工場長」
〈そらそうだ。自分の体になるもんだぞオメー。義手とか義足にいい加減なものを使ったらどうなるかは知ってんだろ〉
「酷ぇ戦争がありましたからねぇ。合わないからってうちに相談に来た人も結構いたっすし。ありゃ酷かった」
初耳な情報が出てたし絶対そこが怪しいじゃねぇか、と思ったが、たぶんこれ以上の情報は無いな。それこそその、ムースルイユって工場の場所ぐらいは分かるだろうが、私はここに居ろと言われている。
しかしナージュが直接検品して問題が無かったって事は、その時はただの歯車だったんだろう。ただしその後誰かが触ったって事も無いだろうし、そもそも工場の中を不審者が歩き回っていれば、工場が本体であるナージュなら気付く筈だ。
と言う事は、この歯車に何かしら仕掛けがある筈なんだが……と思いつつ歯車をよく観察する。例えばこの、苔と錆が混ざったような色が一番多いのはどこかとか。
「……。ナージュさん。もしかしてこの歯車、平たい金属缶を開けるみたいに開きませんか?」
〈あん?〉
「これ、色の広がり方はまちまちですけど、側面は全部色がついてます。中に何か仕込んで、動かした時の振動で隙間が開いて、そこから漏れ出して来たと考えるのが一番ありそうなんですが」
〈……持った感じは中まで詰まった金属だと思ったが、違ったか?〉
「見た目だけ他の金属と同じにして、実はもっと重い金属だったら、中空にしても分からないかと」
私が見えず言葉が聞こえない職人の人は「?」を浮かべているが、ナージュの言葉と険しくなった顔を見て視線を歯車に移す。私は試しに1つ、一番力の浸食がマシな歯車の封印を解いて、職人の人に見てもらった。
ナージュにいわれても「?」がたくさん浮いたままだったが、素直に歯車を両面から持って左右に引っ張ってくれる職人の人。この辺が信頼だな、と思っていると。
「おわっ!?」
〈げっ!?〉
「うーわ」
ぐぐっと力をかけたところで、ぱっかーん、と歯車が割れたのはいい。そんな気がしたというのが正解だっただけだ。
ただ恐らく職人の人には見えなかったんだろう。中空になった歯車の中身を見ているから。そしてその後、飛び退って距離を開けたナージュに気付いておろおろしているが。
私は魔視の強度を下げていたからそうでもなかったが、ナージュはくっきり見えただろうな。もっともこの工場が本体である以上、見えているナージュが避けても床に落ちているんだから逃げられてないんだが。
「あれ、工場長? 中身空っすけど……」
〈待て動くな、いいか動くな。使いの! 何とかなるか!?〉
「あー……ちょっと待ってくださいね。どうしようかなこれ。水出して洗って集めてから凍らせれば……? 水が出て濡れるけど我慢して下さいって伝えてもらえます?」
何せ中から、真っ黒い粉末みたいなものが、ぶわっと出てきたからな。
つーか職人の人も、魔視でみたら粉末を盛大にかぶっているし口にも入ってるんだが、これ大丈夫なんだろうか。ナージュが浄化出来ればいいんだが。
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