第2647話 73枚目:騒動じまい

 ちょっと考えたのち、大神の神殿の屋根に戻り、出力最低限でリソース配りは無しにして、【調律領域】を最大展開する事にした。出力最低限って言っても、私のステータス依存のデバフだからな。

 しかも今回は自己バフを乗せてから展開したので、半時間ぐらいとはいえもし生き残りがいても耐えられないだろう。たぶんこれで良し。


「……ねぇ。ねぇちょっと。何したの?」

「おやヘルタ。どうしました?」

「どうしました、じゃないのよ。ねぇ。私に神託が来たんだけど……?」


 よし、とだいぶ白んできた空を見ながら【調律領域】を切ると、どことなく恨めし気な目をしたヘルタが私を手招きしていた。そして震える声で告げられる。あれ?

 神託って誰から? と聞くと、メーネからだったらしい。何でも、町が思っていたよりすっきりした感覚があったので何かしたか聞きたいというのと、お礼をしそびれていたから受け取ってほしいという内容だったようだ。


「あぁ、なるほど。現場が忙しかったので別行動をしていましたが、その辺の話は必要ですね」

「あなた、神託よ? 私が受け取れたっていうのもびっくりだけど、それを、そんな気軽に……」

「とは言われましても。実際そういう感じですし」


 しかしヘルタに私が見えたのは、もしかすると神託を受け取れるからか? そういう素質があるから?

 あまりにも気軽な、それこそただの伝言のような反応をする私に対してヘルタはぐったりしてしまったが、それこそさっきまで直接メーネとは喋っていたしな。なんならエーレとも話していたし、そもそも大神のものを含む神器を大神の神殿ここまで運んできたのは私だ。

 まぁそれはそれとして、と、インベントリを探し、ある物を取り出す。


「まぁでも、もう大方騒動に決着はつきましたからね。色々ありがとうございました」

「? なにこれ。飴?」

「たぶん私はこのまま立ち去る事になると思いますので。薬草の種類とかメーネを匿ってくれたこととかのお礼と言う事で」

「心臓に悪い事を思い出させないで? ……まぁでも、ありがと」


 なおもちろん私の島でとれた果物から作られた飴なので、とても美味しい。

 と言う事でヘルタにお礼を言って、再び空を経由してメーネの神殿に移動。正面からだと人が大勢動いていたので、断崖絶壁に開いている穴から地下の部屋へ移動する。


〈あ、直接こっちに来たんですね……〉

「上は人が大勢行き来していたので。流石に人が見ている前で扉を勝手に開け閉めすると騒ぎになるでしょうし」

〈それはそうなんですが……いえ、まぁ、とりあえずそれはともかく、ですね〉


 おっ、進歩だ。メーネが進歩してる。立ち直りが早い。


〈まずは、今回この町と、この町における海を司る神の救助に尽力いただき、ありがとうございました〉

「やるべき事をやっただけですので、お気になさらず」

〈後は、どうやら町とその周辺に残っていた、残党の掃討もして頂いたようで〉

「あ、やっぱり残ってたんですね。雑に対邪神の範囲攻撃したんですけど」

〈範囲攻撃!? 攻撃だったんですか!?〉

「大神に敵対する者限定で、味方に対してはむしろ支援ですよ?」

〈確かにとても力が増した感じはありましたけどっ!?〉


 まぁ特に神殿を範囲外にしたりはしなかったというか、神殿に残ってたらダメだろうって事でがっつり範囲には含めたけど。

 しかし神であるメーネでも「とても力が増した」って感じになるって事は、もしかすると神であってもステータスは低めって事になるんだろうか。弱ってるだけなら問題は無いんだが。

 ……。名前の無い邪神の眷属に【調律領域】が刺さったのは、同じく名前の無い邪神の眷属もステータスが控えめだったから、って可能性がある、か? 何せ私とのステータス差が大きい程、食らうデバフは大きくなるからな。スリップダメージ含めて。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る