第2644話 73枚目:最後の詰め

 色々ビビリ散らかしながら、といったらあれかも知れないが、ぴゃぁぴゃぁ言いながらもスライム(神)はちゃんと仕事をしてくれた。すなわち浄化の力を行使したことによって、無事に取り込まれていた神が外に出てきたって事だ。

 ただまぁちょっと予想出来ていた通り、この町の海を司る神以外にも3柱、そう、大神のものを除く神器に対応する数の神が一緒に飛び出して来たのはどうしようかと思ったが。

 そちらは、それぞれの神の神器がここにあるって事で、一応そこに宿ってもらう事になった。まぁそうだな。今この場で一番落ち着くというか、安定する場所はそこだもんな。


「にっ、してもっ、こんの馬鹿力が……!」

〈ひえぇぇぇ……〉

〈うーわ、俺から見ても相当な強度なのにここまで揺らすかよ〉


 問題は、内側から、ガン! ゴン! と殴られまくっている結界なんだが。というか、私の魔力ステータスで耐えられないとか、これうっかり野放しにしたら町が壊滅するぐらいはあるんじゃないのか?

 魔力を注ぐ事によって端から修復しているし、念の為重ね掛けしてあるから一発で破られるって事は無いが、後ろでスライム(神)と、海を司る神である、男の子タイプの水精っぽい姿もドン引きだ。

 まぁ破らせはしないんだが、にしても、信託は既に下されている筈だ。そして少なくともアレリーのところにいた弟子占い師の事を考える限り、契約相手である名前の無い邪神の眷属が神罰で滅ぼされれば契約者も滅びる筈である。


〈おいメーネ、お前の浄化で何とかなんねーの?〉

〈出来るならやってますよぅ……〉

〈だよなー。なぁ使い、お前なんか策ねぇの? このままだと破られるぜ〉

「既にそちらの神に水を司る神に、大神の神殿に神託を出してもらっています!」

〈神託? 何だそれ〉

〈えっとですね、邪神の眷属をですね――〉


 どうやらメーネという名前だったらしいスライム(神)に、海を司る神が色々聞いているが、それはともかく。

 ははは、こんなギリギリでの防御はいつ以来か。他にも色々あった気がするが、今回思い出すのはあれだな。クレナイイトサンゴにやられて手遅れになった大蛸ことデビルフィッシュが降って来た時のあれ。

 あの時はエルルの救助が間に合った(そしてその後これでもかと怒られた)が、今回住民の仲間の発見報告はまだなく、分断されたままだ。しかしまぁ、ちゃんと何とかなるようにしてきてはいるので、耐えるだけで勝てるんだから気は楽だな。


〈あー、なるほど。そんで俺の事も考えてこの部屋でやろうって事になった訳か〉

〈はい〉

〈なるほどなー。……おーい、使いの。それ、動かせるか?〉

「不可能ではない、とだけ返します!」

〈おっけ。んなら俺も手伝うから、それ外に放り出すぞ。ここだとたぶん神罰が届かないから〉

「は!?」


 と、思ったら、なんか予想外の情報が来たんだが。


〈いやほら、ここは俺の部屋で住処な訳よ。神域でもある訳よ。そこに神罰何か落としたら、俺まで煽り食らうっつーの。そんな場所にあの大神が神罰落とす訳ねーじゃん〉

〈…………あっ〉

「ちょっと? そういう事は先に気付いて教えてほしかったですね?」


 いやまぁ冷静に考えればそれはそうなんだが、それはそうなんだが!


〈まぁメーネが多少抜けてんのは仕方ない〉

〈どういう意味ですかっ!?〉

〈箱入りのお嬢様だからだよ。そんじゃ使いの、お前から見て正面の通路あるな? それが本来なら海と行き来する直通路だったから、今ならそのまま海の上に放り出される筈だ〉

「なるほど、そこに押し込め、と」


 ははは。最後にそれなりに難易度の高い追加注文が来たなぁ。結界の固定を解きながら強度は維持して、なんなら通路を通れる大きさに圧縮して、かつ破られないようにしながら海まで押し出せってか。

 まぁ、やるけど。流石にこれで本当に終わりだろうから、やるけど!

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