第2643話 73枚目:身の内

 拘束魔法でしっかりと身動きを封じられている元凶の女性だが、まぁそれはそれはすごい剣幕でこちらを睨んでくるのでどうしたものかと思った。んだが、私のインベントリにはルディル製の眠り薬もあってだな?

 流石ルディルだな。頭の上に一滴たらして少し離れたところで様子を見ていたら、その内気化して吸い込んだようだ。目がとろんとした、と思ったらもう眠っていたからな。

 そのあまりの効果の高さに、後ろで瓶から出て見ていたらしいスライム(神)から、ひえぇぇ、とか細い悲鳴が上がっていたが、それを無視して一旦拘束魔法を解除。しばらく放置して何の反応も無い事を確認してから、言い方は悪いが半分身ぐるみを剥ぐようにして神器を探し始めた。


「えーと、帯がこれで、首飾りがこれで、あれ?」

〈どうしました?〉

「いやなんか、神の力があるものが他にもあるんですが……」

〈えっ〉


 スライム(神)の近くに分厚いタオル地の布を広げて、そこにまず最初に外した帯を置く。そして首元を探してそれっぽい、というか魔視でみるとスライム(神)と同じ色をした首飾りがあったのでそれを外した。

 そこまではいいんだが、ざっと全身をみたところで他にも名前の無い邪神の眷属ではない色がある事に気付いて確認を継続。スライム(神)も想定外って声を上げていたが、ほんとだぞ。

 具体的には右手の中指と左手の小指の指輪と、左足首の足輪だな。……あ、いや、違う。この髪飾りもか。


「というか、この小さい方の指輪に至っては、大神の気配がするのですが」

〈ひえっ!?〉


 左手の小指の指輪、色がそんな感じなんだよなぁ……。もちろん他の装飾品も、色は違うが神っぽいし。

 ただそれらの装飾品を外すたびに、こう、被ってる皮が薄くなっている感じがあったので、念の為こちらの大神のものらしい指輪を最後に回す。そして他の装飾品を全て外してスライム(神)の近くに集めてから、神託をお願いした。


〈え、え、でも、まだ指輪が……〉

「たぶん外すと動き出します。もちろん私がいる限りそれより後ろには通しませんし、一応閉じ込めるつもりはしているので浄化の力を外すことも無いでしょうけど、絶対に暴れますよ?」

〈あ、はい〉


 元凶の女性本人はまだ眠っているんだが、流石に名前の無い邪神の眷属と契約して得た力は別なようだ。そっちも眠ってくれていれば楽だったんだが。

 一応しっかりと詠唱し、魔力をたっぷり込めて、元凶の女性をしっかり包む形に結界を設置する。半球型だが大きさはギリギリまで小さく、ちゃんと床も塞いで、これで逃げられない筈だ。

 神託、届きました。という声を受けて、結界ギリギリのところに動かしておいた左手から指輪を抜き取った。


ドン!!

〈ひゃあぁ!?〉

「まぁ暴れますよねぇ」


 瞬間。ぶわっと元凶の女性が、その形を失った。ゾンビ的な生物パーツが溢れ出すようにして、結界を内側から殴る。まぁ私の魔力ステータスを越える程の力は無いので、音は伝わっても振動は伝わらないし、外にも出られないんだが。

 ギリギリまで小さくしたかいがあったか、結界の中に「マサーカーケッテ」そっくりなものがみっちり詰まっている形になっている。ただまぁ、これなら外すことはまずないだろう。


〈……あ、あ、あの〉

「何でしょう」

〈海を司る神は、あの、外に出られるんでしょうか……?〉

「出られると思いますよ。あの結界、大神に対する敵味方識別を通り抜けの条件にしてますから」

〈な、なるほど……〉


 ただなぁ。

 大神の力を感じる指輪。これはまぁ別として。問題は他の装飾品だ。これも恐らく神器だとして、今回の事を考えると。

 この元凶の女性だった異形、もしスライム(神)を取り込んでいたら、都合、5柱目だった、って事か?

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