第2642話 73枚目:大詰め開始

 しばらくスライム(神)と相談した結果、私が持ち歩いていた封印済みの眷属の封印を少しだけ緩め、中身が見える状態で大神の神殿近くに置いておく。そして私はスライム(神)を連れて、元凶の女性を捕縛、神器を回収して、浄化の力を当てるところまで持って行く。

 そのタイミングでスライム(神)が神託という形でここの神官さん、というか、あの代表をしていた神官長さんに伝える。そしてそのまま浄化の力を行使。神託を降ろせば動いてくれるだろうって事で、そこまで耐久戦、となった。

 幸い(?)今は夜中であり、「マサーカーケッテ」の脅威が去ったのもあって町は寝静まっている。少々大きな封印魔法の箱であろうとも、置いた瞬間を見られる事は無い。


「神託があったとして、どれくらいで動いてくれると思います?」

〈……。流石に、朝まではかからないと思います。一応この町の神ですし、神託自体も、これが初めてという訳ではありませんし……〉

「海を司る神の神殿で戦闘に入る事になる訳ですが、あちらの神官の人達は動くと思いますか?」

〈それは……動く、でしょう。ただ、海を司る神が解放されていれば、説得は任せる事が出来る、と思うので……〉


 まぁ若干の不安要素はいつもの事だ。と言う事で私はまず大神の神殿近くに、ベンチぐらいの大きさにした封印魔法の箱(名前の無い邪神の眷属入り)を置いた。大きさを戻すのはここで止めたが、封印魔法自体はさらに重ね掛けている。数日なら大丈夫だろう。

 そこからスライム(神)入りの瓶を持って、当神の神殿へと移動。空中を移動して行ったからまたなんかか細い悲鳴が聞こえていたが無視。窓も扉も閉まっていたが、魔法を使って開けてしまえばいいだけだ。

 で、かなり奥にある元凶の女性の部屋へ移動。扉の外から気配を探るが……よし、寝てるな。水属性だとコントロールされるかもしれないので、土属性の拘束魔法で、よし。


「なにん……っ!?」

〈ひえぇ……〉


 一瞬で目を覚まして大声を上げようとしたのはいい反応だしいい判断なんだが、私はちゃんと口まで塞いだので声は出なかった。そしてそのまま、片腕にスライム(神)入りの瓶を抱え、もう片方の手で元凶の女性を拘束した土の……櫛みたいに歯が並んで、こう、ばちっと挟むタイプのヘアクリップ。あれみたいなものを運ぶ。

 引きずると拘束魔法の耐久度が減る上に音が出るから、ちゃんと持ち上げてるぞ。そしてそのまま外に出て、上空を経由して海を司る神の神殿へ移動だ。何か悲鳴が2つになった気がするがスルーしてと。

 ここも割と怪我人の受け入れをしていたらしく、大きな部屋には怪我人がいっぱいいた。彼らを巻き込む訳にはいかないので、しばらく周囲で、戦闘になっても大丈夫そうな部屋もしくは空間を探す。


〈あ、あの、ここにも確か、地下室がある筈です……〉

「あなたの時と同じく、相手のテリトリーになってません?」

〈うっ。……でも、あの、今こちらには、そこまで力を感じない、と言いますか……〉


 見つからないから、いっそもう空中に空気の足場を設置して結界で閉じ込めてそこで戦うか、と思ったんだが、それを察知したのか、スライム(神)から提案があった。

 そこから床を中心に探す事しばらく。いわれた通りに地下室があって、魔視でも焦げ付きのような色は残っているものの、だいぶ薄くなっている事が確認できた。なので、地下へと降りていく。

 辿り着いたのは、確かに構造的にそっくりな地下室だった。違うのは、もっと人が通れそうな通路が多いって事だろうか。


〈その……塩の分離も、こちらの神の担当だったので……〉

「あぁ、なるほど。普段は神官の人達がしているにしても、特別な塩は神自ら作っていたんですね」


 ふむ。広さも十分あるし、これなら大丈夫だな。

 さてまずは、拘束されたままの元凶の女性から神器を引っぺがすところからか。


〈あのぅ……出来れば、外に出して頂きたいのですが……〉

「……流石に今ここまで来て怪我人を治しには行きませんか」

〈流石にしませんよ!?〉

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