第2639話 73枚目:原因封印

 とはいえ、手数で潰せるんならどうとでも出来る。私の処理能力を越えようと思うなら、この木製パズルの蟻が3体は必要だぞ。

 なお木製パズルの蟻はだんだん小さくなっていって、最終的に丸太ぐらいの大きさになったところでパーツが生らなくなった。攻撃が通らなくなったからこれが最小サイズだろうって事で、封印魔法で捕まえて圧縮する。

 鉛筆ぐらいの大きさにしてからポケットに入れて、再度上空から周辺を見て回るが、増殖あるいは発生元を潰したからか、「マサーカーケッテ」は1体も見当たらなかった。これで原因は良し。


「一応深夜は回っていないと思うんですが、それなりに時間がかかりましたね」


 町の外の問題が無事解決したので、町にある大神の神殿に戻る。ヘルタのストレスがすごい事になってそうだからな。……しかしスライム(神)はどうしたものか。流石に私があの地下の部屋を浄化するっていうのは無理だし。

 まぁそこは、浄水、水を清める力があるスライム(神)自身がどうにかするんだろう。つまり私がどうにかするべきは、推定元凶の女性だ。


「というか私、彼女がどういう立場にあるのかすら知らないんですが」


 どこかで情報拾い損ねたかな。たぶん結構偉いもしくはすごい立場にいるんだろうけど、地下への入口がある私室で見つけた日記には、神の力と格を奪う計画についてしか書いてなかったんだよな。

 私自身もその情報はそこまで重要でも無ければ必要でもないと思って探さなかったんだが、これは探した方が良かっただろうか。

 何しろ。


「…………」


 夜中にもかかわらず、推定元凶の女性がスライム(神)の神殿の神官さんを何人も連れて、大神の神殿に来ていたからな。来ていたというか、詰め寄っているというか。

 皮1枚分とはいえ、邪神の力を隠し切るだけの信仰心はあるのだろう。と言う事はすなわち、信仰対象であるスライム(神)の居場所ぐらいは分かってもおかしくない。そしてスライム(神)の現状を第三者から見れば、神の誘拐って事になる。

 誘拐した側とされた側、どちらが加害者で被害者かと言えば、まぁ……。って話だな。実際は逆だし、そもそも誘拐ではなく救助なんだが。


「とはいえ、原因である名前の無い邪神の眷属は封印して捕まえましたし、ここは大神の神殿なんですから、これを大神に託して神罰を与えた結果、連座のような形で破滅すると思うんですが」


 ただ問題は、それが出来る人がいなさそうって事なんだよな。

 大神の神殿側の代表者らしい男性が対応し、全く心当たりがない、と伝えているが、推定元凶の女性も、ここに神の気配がある、と譲らない。どっちも正しい事を言っているからややこしい。

 そしてその代表者らしい男性の視界に入ってみたのだが、私に反応している気配が全くない。つまり、見えてないって事だ。事情説明すら出来ないし、私が見えない以上はそこまで深くかかわる人ではないのだろう。


「……。今からでも、あの部屋にあった神の力と格を奪う計画の書かれた手記を回収してくるべきでしょうか」


 名前の無い邪神の眷属の力でべったりだから、大神の神殿の敷地には入れないかもしれない。つまり真っ当である大神の神殿の代表者らしい男性が中身を読む事は出来ないかもしれないが。

 ただ「マサーカーケッテ」の脅威が無くなったとはいえ、大神の神殿の人達に迷惑をかけるつもりは無い。と言う事で開いた門、のちょっと先の、私が張った防御魔法を挟んで話し続ける代表者2人をスルーして、ヘルタの部屋へ移動だ。

 ……門ではなく防御魔法を挟んで、って時点で、私の防御魔法を出る事は出来ても入る事は出来ないって事になるだろうし、それはもうアウトなんだけどな。要するに「敵」って事なんだから。

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