第2637話 73枚目:原因発見
という訳で。
「単に殲滅するだけなら何も問題ない訳ですが」
日が暮れていき、どんどん暗くなっていくのを幸い。私は全力で上空から数撃ちの魔法を連射していた。いくら数がいても、1体1体が脆いし撃破した時に何も起こらないなら、ただ手数だけの問題だ。
というか正直、私のように馬鹿正直に手数で倒す必要はない。それこそ触れたら蒸発する威力の壁系魔法を並べればそれで防衛できるし、何なら町を囲む形で罠系魔法やダメージゾーンを作ればいい。
もちろん相応に目立つ事になるが、逆に言えば問題はそれぐらいしかない。「そのときふしぎなことがおこった」で済ませていいなら、自重を捨てたベテラン勢ならそれぐらいは出来る。
「そもそも、最前線に来ている時点で数を相手にする防衛戦は出来る筈ですし。どこが最初の失敗点かは分かりませんが、少なくともまともな方の神殿が崩れるとアウトでしょうし」
最低限、ヘルタの生存は必要な筈だ。ここまで
だからきっと、人数を揃える為に「最速で失敗」する為のタイミングは、それこそ最初のステージでレーンズに怪しまれるのと同程度に早いんじゃないだろうか。下手をすれば、同じように限界が近かっただろう、合計5ヵ所の防衛拠点のどれかが落ちたらアウトかもしれない。
まぁそれはともかく。町の周囲に見えている「マサーカーケッテ」を一掃し、森の中にいるやつもある程度殲滅して、限りなく物理的に時間を稼ぐ事が出来た。後は、あれがどこから出てきているか、だが。
「あぁ、やっぱり北東の方向が若干先行するんですね」
何のために雑とはいえ、方向別に一掃してたと思うんだ。もちろん通りすがりに出来る範囲で圧を緩める為っていう理由もあるが、それ以上にどの方向から群れが復活するかを確認する為だ。
町の南は海に面した断崖絶壁であり、こちらから敵が来ることは無い。内部には入りこまれているがそれはさておき、だから来るとしたら北を中心としてその左右となる訳だが、一番早く立て直した、あるいは数が揃ったのは、北東の方向だった。
途中で雑に一掃した時もそんな気がしたので、間違っていなかったって事だな。もちろんそちらの方向からやってくる「マサーカーケッテ」の源は上空からでは分からない。のだが、方向に当たりを付けたら近づけばいいだけだ。
「まぁ、人数が集まって手分けして探すのが一般的な攻略法なんでしょうけど」
失敗しないと他の
方法さえ分かってしまえば、事前準備次第で出来るようになる人はそれなりにいるだろうしな。攻略情報は大事だぞ。実際、まだ夜までに時間があるからとログイン時間を節約しつつ情報を待ってる人はいるだろうし。
別に何もそれが間違ってるって訳じゃない。確かに誰かが挑戦しないと情報は手に入らないが、攻略情報を手に入れてから最短クリアで追いついてくれた方が、最終的な人数は増えるだろう。間に合わないのは嫌だろうし、まぁ追いついてくる筈だ。
「その為にも、クリア情報を持って帰る必要がある訳ですが」
この辺かな、と辺りを付けて、再び見える限りの「マサーカーケッテ」を一掃する。夜の森で1体1体はほどほどに小さいといっても、ステータスの暴力が種族特性である竜族の視力から逃げられると思うな?
さて地下か樹木か、と夜の森の中に目を凝らす。一掃しても全く途切れず出てくる「マサーカーケッテ」の群れの一番後ろを探し、空中を移動して行く事しばらく。
「……うーわ」
結論から言うと、私の予想は半分当たっていた。というのも「マサーカーケッテ」の群れは、木の特徴を持つものから出現していたからだ。
ただし半分は外れた。すなわち「マサーカーケッテ」の元になっている奴は、別の特徴も持ってたって事だ。
「確かに、生物っぽいとも、大量生産っぽいとも思いましたが……」
……木製パズルの蟻。たぶんそれが一番近い。もちろんパズルのパーツは全部生きている木だし、木で出来てるのに生物的に動いているが。
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