第2629話 73枚目:行動継続

 と言う訳で、ちょいちょい周囲の「マサーカーケッテ」を一掃しつつ採取作業だ。精霊さん達にお任せ出来れば楽なんだが、どうやらこの森、大量に「マサカーケッテ」が通り過ぎて行った影響か、あちこちに焦げ付きみたいな色が残ってるんだよな。

 とはいえ、場所に残っている力場を【調律領域】で排除する事が出来ないのは分かっている。あれはどっちかっていうと【王権領域】の方だ。そして【王権領域】はがっつりティフォン様とエキドナ様の力によるものなので、今この場所だと異世界の神の力になる。

 最新の時間軸なら、分霊経由でティフォン様が異界の大神と協力体制にあるから大丈夫かもしれないが、ここは少なくとも過去だからな。止めておいた方がいいだろう。


「にしても、マサーカーケッテの素材はインベントリに入るのに、どうして薬草類は入らないんでしょう」


 ヘルタに教えてもらった分だけでなく、【鑑定☆☆】で調べると良さそうな薬草がいっぱいあったんだが、どれもインベントリには入らなかったんだよな。20株ずつぐらい持って帰って畑に植えて見たかったんだけど。

 まぁでも、普段から畑仕事に参加している私だ。さくさくと魔法を駆使して薬草の採取を進めて、あっという間に2つの籠はいっぱいになった。薬を1つ作るのにどれだけの薬草を作るのかは分からないが、それなりに作れる筈だ。

 と言う事で再び上空に飛びあがり、もう一度、今度は西方向の「マサーカーケッテ」の群れを雑に一掃してから神殿に戻る。そして薬草の入った籠を部屋の隅に置いて、姿消しの魔法を解除した。


「さて。しばらく分の薬草は手に入りましたが」


 もう一度採取に行きつつ「マサーカーケッテ」の数を減らしておくか、それとも洗い場に寄って洗い物を手伝うか。それともヘルタの様子を見に行くか。

 これらの行動はどれも現状維持もしくは助力なので、「マサーカーケッテ」が来る源を探しに行くか。あるいはこの神殿や他の拠点を巡って私が見える人を探すか。選択肢が多いな。

 考えながら耳を澄ませた感じ、私の張った防御を「マサーカーケッテ」が突破する事は出来ていないらしい。もちろん人が出入りする事と、内側から外側へ攻撃する事は出来るようになっている。


「……あの壁がいつまで持つのか、という不安はあるようですが、とりあえずは大丈夫そうですね」


 なら籠を持って姿消しをかけて、洗い場に寄って洗い物を軽く手伝ってから採取に行って来よう。籠2つじゃ、あの人数の怪我人には足りないだろうし。まだまだ「マサーカーケッテ」はいる上に、備蓄も必要だろうし。

 素材は別にいらないが、少しでも外にいる「マサーカーケッテ」は減らしておくべきだろうしな。ここまで町がボロボロになってしまっては、再建も大変だろう。その為の力は多い方がいい。

 と言う事で、まだまだ山積みになっていた洗い物の籠をこっそりお掃除魔法で綺麗にしてから大ジャンプして上空へ移動。今度は東側の群れを雑に一掃して、再び薬草採取だ。


「しかし本当に、どこから湧いて出ているのか。工場で大量生産されているんでしょうか」


 流石にそんな訳が無いと思うんだが、それぐらい個体の差が無いし数が出てるんだよな。まぁこれだけの数を作り続けられる工場ってどんな規模だ、とも思うし、それならとっくに見えてなきゃおかしいんだが。

 いやまぁ規模が大きくても、それこそ工場の本体が地下にあったりしたら見えない。森の中で動いているのは見えるが、それが地面からもこもこ出てきていても見えないだろう。

 ……いや、そうか。そういう可能性があったな。


「そう言えば、雫を降らせる「大樹」がメインギミックになっていましたね……」


 木の実のように人工物を生産し続けるモンスターを生む木……って可能性は、あるか。

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