第2628話 73枚目:周辺全景

 私が町を離れている間に突如大量の「マサーカーケッテ」が投入されて生存者が全滅しました、なんて事になったら取り返しがつかないので、一度上空に飛びあがってから生存者がいる場所を確認、合計5ヵ所あったそれらに、しっかり詠唱して半球型の防御を張っておいた。

 ヘルタはベッドに入って眠ったのを確認しているので、今騒いでいる中に彼女は入っていない。さてこれで生き残りが防衛戦をしている場所は大丈夫だな。割られれば分かるし、そもそも私の魔力ステータス依存の物魔両方に対応した防御だから。

 どうやらこれも制限の一種なのか、薬草が入っていたと思われる籠はインベントリに入らなかった。ただ背負って使う形をしていて結構な大きさがあったので、2つ分もいっぱいにすればそれなりの量の薬が作れるだろう。


「おわぁ」


 と思って、籠を2つ持った状態で太陽の位置から北側に見える森に向けて空を移動して行ったんだが……まぁ、いるわいるわ。何がかといえば、もちろん「マサーカーケッテ」がだ。森の木の枝にもいるし、地面もほとんど埋まってるんじゃないだろうか。

 まぁでも、町の上空から見た感じ、南以外の全部がこんな感じだったからな。なお南は断崖絶壁であり、その向こうには海が広がっていた。なお、町自体は数字の2を断崖絶壁にくっつけたような、ちょっと変わった形をしている。書き始めの開いている部分が断崖絶壁側。

 ……。いや、あぁ、あれだ。前方後円墳。あれを縦に割って半分崖下に落とせばこうなる。うん。そっちの方が近い。


「とはいえ、これだけ数がいて森を埋め尽くしていると、薬草を探すも何もありませんし」


 さて目の前の問題に戻ろう。びっしりと大地を埋め尽くす「マサーカーケッテ」だが、しばらく見ている間も尽きる様子は無い。どこから来ているのかは、北側が一番町に向けて出っ張っているものの、距離が開いた先で崖の方まで続いている森に隠れて分からない。

 だがまぁ、1体1体がそんなに強くないのも確かだ。いくらダメージコントロールが上手な群れとはいえ、圧倒的火力で各個撃破されればどうしようもないだろう。


「それが原因で私にヘイトを向けるのであれば、まぁそれはそれです。私に向かってくる分だけ、町が立て直す時間があるという事ですし」


 と言う事で。


「容赦はしません。問答無用で薙ぎ払います――――[マジックアロー・ストーム]!」


 私が使えば、素手であっても文字通り。嵐のように魔法の矢が降り注いだ。

 動き自体は鈍いんだ。そんな相手に上空から見える状態で、数撃ちの魔法と言えど外す訳がない。そして数で動く相手だから1体ずつの体力そのものはそう高くないと踏んだのは正しかったか、あるいは私のステータスが高すぎるだけか、文字通り片っ端から「マサーカーケッテ」は撃破されていった。

 ……綺麗さっぱり消えているから、これはたぶん私のステータスが高すぎるだけだな。流石に地面には当たらないように、魔法の槍ではなく魔法の矢を選択したんだが。


「まぁ、簡単に片付くのは良い事です。……とはいえ、キリがありませんね」


 で、とりあえず森の中で町に近い位置からある程度の範囲を一掃した訳だが、わらわら次から次へと、湧いて出てくるように集まってくる。流石に町の方へ進んだ分が戻ってくる事は無いが、東と西にいた群れは密度を下げてこっちへ広がってきている。

 まぁでも、一度減らせば隙間は空くし、その隙間を埋めようという動きがあっても、この程度の体力なら片手間で問題ないな。攻撃を外さなければ地形にダメージが出る事も無い。

 薬草の特徴はしっかり覚えてきたし、名前も聞いたので最悪【鑑定☆☆】で調べればいい。採取の仕方は根本から切る事とヘルタに教えてもらったので、風属性魔法で切って浮かべて籠に入れればいいだろう。


「しかしまさか、物に防御魔法をかければそれで触れるとは思っていませんでしたが」


 そういう気付きもあったので、籠はちゃんと持てている。防御魔法越しに。さーて、頑張って集めるぞー。

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