第2608話 73枚目:今回の報酬

「あ、やっぱりこれが報酬だったんですね」


 インベントリに入るか分からなかったから抱え込んだのだが、どうやらこれで正解だったらしい。ふっと落ちるような感覚があったと思ったら、突入位置に戻ってきていたからな。

 もちろんそこから話を聞かれたのだが、どうやら今回、私は割と遅い方だったようだ。というのも、ベテラン勢は普通にお屋敷に向かってアレリーに見つかり、そのままアレリーを守る行動を取ったらしいからな。

 ただその場合、岩山は完全に名前の無い邪神の眷属のものになってその後が大変な事になると描写され、街の被害も甚大。占い師さんの弟子も見つかることなく、幻の炎の原因も分からないままらしい。


「それでもクリア扱いになるんですか?」

「なるようです。どうやら岩山の原因を排除できずに最終段階に入った場合、眷属の刺客と暴動を主導していた人間を倒すことでクリアと判定されるのでしょう」

「あー……」

「もっとも、ちぃ姫さんのクリアとは状況が違い過ぎます。報酬は手乗りサイズの白い石で固定だと思われていましたが、恐らくこれは最低ラインなのでしょう」

「でしょうね」


 私の貰った石の大きさを考えれば、それはまぁ、そうだろうなとしか。

 ちなみに今回のステージで分かっている失敗フラグは、まずアレリーの死亡。ついで修神おさめがみである白い石の破壊。弟子占い師の撃破失敗。街の現代表、占い師さん、現場監督さんのいずれかの死亡と、大体は命にかかわるものだったようだ。

 そうか。あの新弟子になる元婿候補の人、アレリーに出会う前に人工湖に行ってないと影も形も出てこないのか。と言う事は、少なくとも私の情報を知らない召喚者プレイヤーはそもそも存在に気が付いてないのか。


「ところで、この石はどうすればいいんでしょう」

「空間内では加工が難しいとされていましたが、加工に必要なステータスが高いというだけの事だったようです。神の力との親和性も高く、神印を彫って神殿に飾る事で力を通しやすくする、という利用法を取る方が多いようですね」


 なるほど、神の力との親和性が高い。……まぁそれはそうか。力的にはほぼ真っ白な状態とはいえ、神が作り出した石材だもんな。それはそう。

 そしてこちらも空間内と違い、普通に着色する事も出来るようだ。まぁ、そうだな。何しろこれは3代目(予定)の神が作り出したものなんだから、2代目の加護がついている訳がない。

 しかし、神の力との親和性が高いか……。結構大きさがあるから、どうしようかな。作りたいものは色々あるが、恐らくこれもレーンズの加護と同じく、再挑戦するなら消える事になるだろうし。


「まぁそもそも、加工している時間があるかどうか怪しいんですけどね。ところで、次のステージってもう挑めるんですか?」

「内部時間あと1時間ほどで神殿が完成する予定なので、それ以降なら大丈夫かと」

「分かりました。一旦ログアウトしてきます」


 今回は加速状態で2日目の午前中だから、ほぼ丸1日で済んだ。つまりリアル20分強って事だな。30分は切った。

 これで午後の残りログイン時間は2時間半ちょっと。推定残り3体分ステージがあるとして、同じく加速状態で1日以内にクリアできればギリギリ夜までにはクリアできそうだろうか。

 とはいえ、神殿を建てる必要があるのは確かだから、もうちょっとかかるとして。……うん。やっぱり結構ギリギリな感じがするな。


「まぁ、分かってたことだけど」


 だから夜に一旦ログアウトするのを含めて、4時間ログインするつもりで残り時間を計算してるんだし。

 ……にしても、ほんと住民の仲間の行方に関する情報が出てこないな。もしかして、その救出で更に1ステージクリアする必要がある、とかか?

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