第2601話 73枚目:各位行動

「……ちょっと思いましたが、加護があると言う事は、一応元の神も生きているという事になるのでは?」

「普通ならね。ただしあの岩山の神に関しちゃ、岩山そのものは揺れちゃいない。それに元々継承した神格だからね。継承できるように残ってるってのは、おかしい事じゃないのさ」


 と言う事で、2代目白彩岩山の神が力尽きているのは確定。ただ占い師さんは、これから現代表のお尻を叩いて4代目代表の手記や記録を探させると言っていたので、私はその事を現場監督さんへ伝えに行った。

 すると現場監督さんは、4代目代表だな? と確認を取った後、職人仲間の方に何か情報が残ってないか聞いてくると家の外に出て行った。この人も徹夜コースなのに、頑張ってくれるなぁ。

 さて、これで各々できる事をしに動き始めた筈で、私は手が空いた。とはいえ、今から寝るっていうのも違うだろう。もう夜中はとっくに過ぎて、夜が明けるまであと数時間も無いんだし。


「さて、と」


 でも物を動かせない現在の私では資料探しの手伝いは出来ないし、他の場所に行ったところで出来る事は無いだろう。人工湖への連絡も行われて、あの元婿候補の人を呼び寄せると共に、故障という事になっている魔道具を回収する方向で動いている筈だ。

 インベントリには回復効果のあるご飯があるが、それをどこで振舞うんだって話だしな。余計な警戒をさせて時間を余計に使わせるのは妨害になってしまう。協力する立場でそれはちょっとダメだろう。

 かといって、ぼーっと事態の推移を見守るっていうのもどうかなーと思った結果。私が足を運んだのはどこだったかと言うと。


「とりあえず、浅い場所から試してみましょうか」


 石切り場から行ける、岩山の中央に続いてる(確定)洞窟だ。

 おおよそ1日ぶりにここへ来た訳だが、やはり力場の汚染が酷い。ちょっとはマシになってないかなと思ったが、無理そうだな。まぁそれはそうか。基本的に神の力は神でないとどうにもできないんだし。

 とはいえ。それはこちらの世界での話であって、フリアド世界ではまた別だ。具体的には。神でなくても力場を浄化する手段が、それなりにある。


「――とりあえず、全く効果が無いって訳ではなさそうですね」


 作っておいたんだよな。割と使う機会が多かったから。その場を浄化する系のお札と、魔法に浄化の特性が付与される杖。

 普通のお掃除魔法では効果は無かったが、この杖を使ってのお掃除魔法なら魔視でみえる力場が薄れていくのが確認できた。もちろんお札の効果も出ている。まだ力場が弱い所でやっているが、効くのであれば力場が強いところでやっても大丈夫だろう。

 という事で、一気に奥まで移動。こちらは約1日前と変わらず、8割方が取り込まれた状態だ。ほんとよくここで止められたな。わき道から潰していって良かった。


「まぁ、本体に干渉すると必要な記憶や力まで消してしまいかねませんし。一番濃いところを少しでも薄めるようにしていきましょうか」


 魔法の連続使用は問題ない。この場に残った力程度で私の耐性を抜くのは無理があるだろうし、お掃除魔法ならいくら連打したところで私の回復力を上回る事は無い。自発的に使う分にはな。

 ただ、神の力は神でないとどうにもできない。これがある以上、私がこの場の浄化を進めているのを目撃された場合、ちょっと面倒な事になる予感がしないでもないんだが……。


「まぁ、今の私はどこかの神の使いとして認識されているようですし、たぶん大丈夫でしょう」


 それに最悪、神の力を借りる事が出来る浄化用のアイテム&杖って言っとけば大丈夫だろう。このお札と杖は、素材をボックス様に祝福してもらってるからな。神の力が含まれているのは嘘じゃないし。

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