第2602話 73枚目:翌日突入
さてそこから恐らく数時間ほど頑張ってみたが、やっぱり邪神であっても神は神という事か、浄化作業は捗らなかった。まぁ捗っても困るんだが。主に、ここの様子を見に来るだろうアレリーや占い師さんへの誤魔化しが大変な事になるって意味で。
で、夜が明けるまで頑張って、天井の一番高い所から滴り落ちそうになっている分は浄化できた。あ、ここに何かいたな、っていうのは分かるぐらいなので、まぁまぁいい感じになったんじゃないだろうか。
なお何故洞窟の奥にいるのに、夜が明けるのが分かったかと言うと、外の音に意識を向けていたからだ。この洞窟は石切り場に面している。そして石切り仕事は肉体労働なので、朝早くから働く人がいる筈だからな。
「……。まだ終わってないみたいですね」
実際気合の入った声で、恐らく作業中の注意を確認している人達を確認し、一旦お屋敷に戻って来た。そしてまず占い師さんを探したんだが、とりあえず一通り探せる範囲にはいないようだ。
ならアレリーのところに行くかと判断して、昨日アレリーが眠りに行った客間へ移動。とはいえまだアレリーは眠っているらしく、部屋の中に入る事は出来なかった。扉も窓も閉まってたからな。
かといって、資料室というのがどこにあるか分からないし、流石に貴重だろう本を魔法で動かす訳にはいかないだろう。つまり手伝えることは無い。なら現場監督さんの方へ行くか、とも思ったんだが。
「他の人に聞いてみると言っていましたから、あの家にいるとは限らないんですよね」
でもなぁ。あれ以上洞窟に残って浄化を続けていても、それはそれであんまり手応えが無かったし。無駄とは言わないが、程度だった上に、本来この街の人と、次代の神がやるべき仕事だろうし。
……そう言えば、もうあの弟子予定の元婿候補の人はこのお屋敷に来てるんだろうか。と、アレリーの部屋の扉の前でつらつら考えていると。
「あれ? 昨日の美少女だ」
「おはようございます。一応私他の人に見えないみたいなんで、あんまり言わない方がいいですよ」
「あー、なるほど。それでさっきから変な目で見られてるのか。まぁいいけど」
その考えていた当人である、元婿候補の人がやってきた。しかしまぁいいけどとは。周りの人の目って言うのは割と大事だと思うんだが。
……そのまま話し始めた元婿候補の人は、簡単な面談の後即行で弟子として認められたらしく、既に名目と扱いはあの占い師さんの弟子らしい。まだ正式発表はされてないが、お屋敷の中では周知されているとの事。
なので少々変な事をしていても見とがめられない、よって私と話していても問題ないって事だったようだ。
「ただ弟子として認められたって言っても、師匠がなんか、重要資料の確認? とかで忙しいらしくて、修行も何も無いんだよ」
「あぁなるほど。それで当てもなくお屋敷の中をぶらぶらしていたと」
「そうそう。一応これから、ここで暮らすことになるらしいし」
「実感がありませんねぇ」
「昨日の夜に叩き起こされてから怒涛の展開だったからなー」
怒涛の展開については、まぁ、そうだな……としか言えないのでさておき。そうやってお屋敷の中を改めて探検というか確認していたら、私がいたって事らしい。
「ところで美少女。その部屋何?」
「このお屋敷の1人娘が寝ている部屋ですね」
「……あれ? ここの家族は2階で生活してるって聞いたんだけど」
「日が暮れた直後に襲撃があって、寝ていられる状態じゃなくなったんですよ」
「あー……それなら無理に起こさない方がいいかぁ。あと長居しても良くなさそう。またな美少女」
「そうですね。まぁ占い師さんの弟子になったら、後でまた会うでしょうけど」
どうやらあの元婿候補の人に関しては、そういう事になったようだ。しかし、冷静に考えるとあの人が今回の件で一番環境が変化してるな。婿候補として街に来て、落とされて、絶縁されて、水を供給する魔道具を動かす仕事に就いてって時点でだいぶ波乱万丈だが。
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