第2600話 73枚目:高難易度
……これは、たぶん現場でどうこう出来るものではないし、いずれにせよ街の代表に話を持って行かないとどうにもならない。
しばらく考えてそう結論を出した私は、とりあえず現場監督さんに、「色彩固定の加護」というものがこの白い石にはかかっていて、これはれっきとした神の力であり、人間ではどうにもならないだろう、という事を伝えた。
ただしこれだけだと、少なくとも現場監督さんは絶望する。なので続けて、私は今すぐお屋敷に戻って、大神に仕える高位神官である占い師さんに相談し、次代の岩山の神も含めて街の代表と話し合い、方針転換するにしろ、神の方に働きかけるにしろ、何かしら今後の事を考えてくる、と伝えた。
「……そうか。まぁ、そうだな。神の力ならしょうがねぇ。神は、神か神官しかどうにもできねぇ」
「必ず何か成果を持ち帰ります。というか、いくら代表でも、神に挑めとは言わないでしょう」
「あぁ……あぁ、そうか。そうだな。神に挑むのは、邪神ならともかく普通はダメだ。邪神ならいっそ、うちの神さんに加護を貰って叩けばいいかもしれないが……」
「邪神ではないですね。なので、ひとまず朝までは待っててください」
「朝までと言わず、何日でもかけていいだろうよ。何せ相手は、神なんだろ」
なお問題の2代目は既に力尽きていて、当事者であるところの神に直接聞くって事は出来ないんだが、まぁ、何とかしよう。
しかし思ってなかったものが出てきたな。と、お屋敷に戻って占い師さんを探す。とっくに深夜は回っているが、占い師さんはまだ起きていた。街の代表もだ。徹夜コースかな?
まぁ街の一大事であり、白い岩山の神の一大事だ。そうもなるか。と納得してから、占い師さんに「色彩固定の加護」について伝える。もちろん現代表の、ダメな方の親バカ発揮もだ。
「…………。なるほど、ねぇ。言いたい事はいくつもあるが、まずは、お前だよ」
「ん?」
「この、バカ! やっていい事と悪い事の区別もつかないのかい!」
「えっ」
その結果、その場で現代表への占い師さんによる、全力のお説教が始まった。まぁそうだよな。最初は何の事だって顔をしていた現代表だが、話が核心に触れるとざっと顔から血の気が引いていた。ははーん、忘れてたな?
もちろんその、忘れてたな? っていうのは占い師さんも分かったらしく、見ているこっちがはらはらするような勢いで怒号を飛ばしていく。まぁ勢いと声量はともかく、言っている事は至極真っ当なので、私は何もしないが。
そのお説教を聞きつけたらしいメイドさんが顔を覗かせていたが、すぐに引っ込んでいった。ちょっと後をついて話を聞いてみると、どうやらあの占い師さん、白い岩山の神と進退を同じくするというだけあって、4代目の時からずーっとこの家にいたとの事。だから5代目と6代目、つまりアレリーと祖父と父親は頭が上がらないらしい。
「……はぁ――――。全く、そこまでバカな事をしているとは思わなかったよ。山より高く反省を積み上げな」
「ハイ……」
そうか。この辺海が無いから、海より深く反省しろ、じゃなくて、山より高く反省を積み上げろ、になるのか。
で、一息ついてふらふらしながら部屋を出て行ったしおしおの現代表を見送ったところで、占い師さんにインベントリから出したハーブティーをカップに入れて差し出す。血圧上がってるだろうから、それを下げないとね。
それをぐいっと飲んでしばらくカップをじっと見ていた占い師さんだが、息を1つ吐いて切り替えることにしたらしい。
「しかし、困ったねぇ。神の代替わりにおいて、
「当の神に聞こうにも、まぁ、状態が状態ですしね」
「……完全に取り込まれてないなら、神格と信仰の引継ぎをすれば、その中に入っているかもしれないが……その、引継ぎの儀式をするには、弟子が育たないといけないしねぇ」
つまり、明日中の完全解決は絶望的って事だ。
……いや、一応「拉ぎ停める異界の塞王」になるルートを潰すことは出来たから、私の目的は達成されてるんだが……消化不良だな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます