第2598話 73枚目:裏ボス
とはいえ、流石に現場監督さんも今この状態の通りで、周りから見えない私と話を続けるのは不都合だ、と思ったらしい。そうだな。私は良いが、現場監督さんは幽霊が見えるって事を知っている周りの人が更に不安になるからな。
よって低い声で「ついてこい」と言われ、現場監督さんは通りを移動し始めた。私は大人しくそれについて行く。何度か道を細い方へ曲がって辿り着いたのは、お屋敷にそれなりに近い場所にある家の1つだった。
……確かこの街、お屋敷を中心に拡張していって、途中からより他の街とのやりとりが便利な方向を重点的に開発していったらしいから、お屋敷に近い場所ほど古株の家って事になるんだよな。やっぱりこの人では?
「この騒ぎはお前のせいか、幽霊」
「違います。邪神のせいです」
「……じゃしん?」
「邪神です。詳しくは占い師の人に聞いて下さい」
「いやそうじゃ……あぁ、じゃしん、邪神か。……何ぃ!?」
ただここで予想外の反応が来たので、名前の無い邪神の眷属がいた事、岩山の神が力尽きている事。ただし次代の神は既に生まれていて、元々代替わりする時期だった事。なおかつ、名前の無い邪神の眷属自体は既に大神の裁きが下って排除されている事を説明する事になった。
そこそこ時間がかかったし、現場監督さんは大変と頭を痛そうに抱えていたが、全部事実だし既に大体決着がついた。知らない内に忍び寄っていた脅威が、わたわたしてるうちに片付けられてたってだけの話だ。
正直、知らない方が平和だったと思う。既に終わった事とは言え、神が関わる邪神の眷属の暗躍なんて、一般人には聞くだけでも重すぎるだろう。お腹いっぱい通り越して潰れかねない。
「しかし、幽霊だと思ってた奴が、本物の使いだったとは……」
「占い師さんが大神に仕える高位神官でしたからね。彼女には負けますよ」
「ちょっと待て。それは聞いてないが?」
あれ、言ってなかったか。大分怒涛の展開だったから、抜けたかもしれない。
ともあれ、一応説明は終わった。そして占い師さんの話が出て終わったので、その流れで現在私は、アレリーの望む、アレリーにとってもっとも佳い相手を探している事を伝える。そして反応を見る。
……今、何か飲み込んだな? 何か耐えたな? 自分の中から湧き上がった何かに蓋をして目を逸らしたな?
ふ――――ん?
「そう言えば、外から婿候補としてやってくる人達は面談を受けるようですが、この街から面談を受ける人はいなかったんですか?」
「……いや、いた」
「あなたは受けたんですか?」
「…………受けた」
……。
あれ?
「振られたんですか?」
「振られてねぇっ!」
おっとー。もう自白したも同然だな?
というのはともかく、おかしいな。婿候補としての面談を受けにいったんだったら、アレリーはオッケーを出している筈だ。もちろんこの現場監督さんではないって可能性も無くは無いが、たぶんこの人だと思うんだよな。
だが、現場監督さんは面談を受けに行ったと言っている。だがアレリーの婿探しは続いている。と言う事は落とされたって事なんだが、振られた訳では無いらしい。ん? おかしいな、辻褄が合わないぞ? マジでこの人じゃなかったのか?
「……書類選考で、落ちたんだ」
「えっ」
「いや、落ちてはない。落ちてはないんだ。ただ、条件を付けられただけで……」
おい。
おい、現代表。
「……ちなみに、条件とは?」
「……白い石に、色を付ける方法を、開発しろ、と」
ちょっと待て、そこでそう出てくるって事は。
「……確かそれって、この街の職人が、総力を挙げて研究しているテーマだったのでは?」
「あぁ、そうだ。だから今の代表は、少なくとも街の人間と結婚させるつもりは無いらしい」
「ちなみに、その条件って、その、街の人達やアレリーは知っているんですか?」
「いや、口外するなと言われたから、誰にも言ってない」
うーわ。いや口外するなって約束をちゃんと守る辺りポイント高いが、うーわ。
娘の恋路を積極的に邪魔するタイプの厄介親だったか……!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます