第2595話 73枚目:正体と要因
やっぱり只者じゃなかったじゃないか。
「何だ!?」
「悲鳴?」
「どこから……」
「上?」
私が生のセージと封印魔法の箱を渡したら、まぁ予想通り占い師さんは丸い灰皿に生のセージを入れて火をつけ、もくもくと煙を出し始めた。その煙を前にぶつぶつと口の中で例の、詠唱もしくは祝詞を唱えだした辺りで、流石に周りの人も占い師さんが何かを始めた事に気付いたようだ。
そして煙がキラキラし始めたのは、私はもう見ている。だからそれは良かったんだが、そのキラキラした煙が水晶玉を中心に渦を巻き始めたのはどういう事か、と思っていた。
ただそこで、どう考えてもこう、おぞましい何かの悲鳴が響いてきたんだよな。上から。……うん。絶対あれは、正体を隠さなくなった弟子占い師だろ。まだアレリーの部屋の周りでうろうろしていたのか。
「原因がもう捕まえてあったんだ。ちゃぁんと送り届けたから、大神に裁きを受けたんだろうねぇ」
で。その悲鳴が聞こえたところで煙も消えて、占い師さんが言った言葉がこれだ。いまなんて???
「大神に!? それは、その、それだけの相手がこの地にいたと!?」
「そういう事だよ。まぁ、大元を大神にお任せ出来ても、問題はまだ残っているようだけどね」
こっちを見ないでほしい。一応私は自分の後ろを振り向いてみたが、壁しか無かった。止めろ。アレリーが、占い師さんが私が見えている事&今このタイミングで見た事に気付いてにっこにこしてるじゃないか。
しかし、大神って言ったよな。しかも大神に送り届けたって言ったよな。と言う事は、大神と直接、こう、やり取りできる立場って事? 本当にどういう事?
と、混乱する私をよそに、占い師さんがテキパキと指示を出して、しっかり武装した兵士の人達が2階へ様子見に行った。アレリーの父親は街の方の騒動で何か報告を受けたらしくそちらに移動。で、占い師さんとアレリーと私が残ったんだが。
「……大神に関係する方とは知らなかったのですが?」
「そりゃぁそうだよ、使いの娘。石は自力じゃ動けないだろう? だから修行も大神の許可も、高位神官が出向いてやらなくちゃいかんのさ」
そういう事だったらしい。いやまぁ、そりゃ、それは確かにそうなんだけども。
「ここの山が神になった時に、この家の初代が神官を招いてね。そこから弟子という形で神官の役を継承しながら、ずーっとここにいたのさ。占いはついでだが、正体を隠すのに丁度いいってそう名乗るようになってねぇ」
「そうだったのね……」
「ただし、神官は神と一緒に代替わりするもんだ。だから弟子を探して育てていたんだが……どうしたもんかね」
そういう事だったらしい。なるほど……なるほど……? でもアレリーも初めて聞くって顔してるから、これはもしかすると街の代表になった時に伝えられる事だったのかもしれない。
しかし、大神に仕える高位神官だったとは。弟子と言うか継承者だったんだな。……と言う事は、あの大きな水晶玉が神官として必要な媒体とか、いや、下手したら大神由来の神器とかまであるか……?
あれ? これ思ったよりヤバかったんじゃないか? だって恐らく本来の世界線だとこのお屋敷もかなり大変な事になってる筈で、絶対にどう考えても貴重な水晶玉は、誰かが持ち去ったって事だろうし……?
「ちなみにその水晶玉、もし行方知れずになったりしたらどうなります?」
「縁起でもない事を言うんじゃないよ。大神の神殿に直接空間を繋げる神器が紛失だなんて……いや、それがあり得るから来たんだね?」
「まぁ……」
「……最悪だね。今送ったのは名前の無い邪神の眷属だった。ある程度とはいえ、直接大神に影響する事も出来るようになるだろうさ」
なるほど。
つまり、出来るようになった結果が、こうならなかった世界線って訳だな。
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