第2594話 73枚目:脱出と合流
外に出て見て気が付いたのだが、街が燃えるような光景はそのままだが、だいぶパニックは収まっていたようだ。子供に至っては、熱くなければ焼けもしない見た目だけの炎で遊び始めているような声が聞こえた。すごいな。無害だと分かれば即おもちゃにするか。
いやまぁ子供なんてそんなものだろうが、と思っている間にアレリーが階段上の窓に到着。鍵はかかっていなかったので普通に外から開いて中に入り、私が続いたところで窓を閉める。そしてアレリーは室内履きのスリッパを外履きのブーツに履き替え、階段を降りて行った。
「お、お嬢様!? ご無事ですか!?」
「えぇ、大丈夫よ。お父様はどちらかしら?」
「こちらです! お嬢様が降りてこられました!」
なお当然ながら弟子占い師はどこかと聞かれたアレリーだが、分からないわとアレリーはすっとぼけていた。そうだな。使いこと私が色々やったって言っても通じないからな。そもそも弟子占い師が敵だったと言っても誰も信じないだろうし。
望みがあるとすれば、明日までに話を付けておくと言っていた占い師さん及び話を付けられた街の現代表ことアレリーの父親だが、日が暮れてすぐこの騒ぎだったからな。そっちはどうなっているやら。
なんて思いつつ移動した先で、アレリーが父親と合流。どうやらその場に占い師さんもいたようだ。もしかして、話を付けている最中だったのだろうか。
「あぁ、丁度いいところに来たね。あの葉っぱはまだあるかい」
「ありますけど、袋で渡した方がいいですか?」
「数枚でいいよ。もう仕上げだからね」
で、感極まってアレリーを抱きしめて矢継ぎ早に無事を確認するアレリーの父親を放っておいて、占い師さんは私にセージを要求。周りの目がアレリーとその父親に向いているのをいいことに、堂々としたものだ。
しかし仕上げとは。と思いつつ生のセージの葉を5枚ほど渡す。それをさっと受け取った占い師さんの行先を見ると、そこには最初に使った丸い灰皿のようなものと、大きな水晶玉があった。
たぶん、大人の男性の頭より大きいんじゃないだろうか。白地に黒い糸で複雑な模様が刺繍されたクッションに乗っている。そして占い師さんは、丸い灰皿を手前に、水晶玉を奥にして座った。
「ところで使いの娘。弟子になろうとした奴はどうしたんだい」
「正体を現して取り繕わなくなったので、窓から脱出して放置してきました。アレリーを岩山の神がいた場所に連れて行くつもりだったようです」
「……ふむ? そりゃおかしいね?」
「私は朝方に様子を見に行ったんですが、既に神自身は力尽きていました。その場も随分とあちら側に染め上げられて、先代の神もほぼ取り込まれていたので……まぁ、碌な事にはならないでしょうね」
「なるほどねぇ……で?」
「その取り込もうとした奴はその場で厳重に封印して切り離したので、ギリギリ取り込まれきってはいない筈ですよ。ちなみに封印したそれは私が持ってます」
アレリーにしたのとほぼ同じ説明だが、占い師さんはちょっと目を開いて、くっくっくと笑い出した。うーん。やっぱりこう、大事なフラグをへし折ってしまったようだな。後悔は無いけど。
「そりゃあいい。手間が省けるってもんだ。使いの娘、それをここに置きな」
ここ、と指定されたのは、灰皿と水晶玉の間だった。なので素直に、サイコロサイズの封印魔法の箱をポケットから出して、そこに置く。厳重に封印したままだがいいんだろうか。
しかし、本来ならたぶん3m四方はあった筈なんだよな。封印魔法を重ね掛けたら圧縮できたからこの大きさになってるけど。ついでに中でどれだけ暴れていても外には影響が出ない厚みになってるから、本当にただの不透明なサイコロだけど。
……。ま、手遅れになるよりいいか。
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