第2592話 73枚目:騒動対処
しばらく待ってみたが、お屋敷の中はまだまだばたばたしているし、何故かアレリーの部屋に来る他の気配は無い。……弟子占い師が、自分が見に行くと立候補でもしたかな。普段の様子から考えれば、不自然ではないか。
アレリーは不安そうにしていたものの、今日は普段から比べると更に喋ってただろうからな。私がいた分。案の定、音を消してしばらくしたら眠ってくれたようだ。
これで荒事になっても、音と気配に気を付ければアレリーの記憶は平和なままだ。何せ。
「[シールド]」
扉の外側で、何か力が高まっていたからな。
もちろんさせる訳がないので、扉を指定して防御魔法をかける。私の魔力ステータスを参照した補助魔法なんだ。神の力だろうと、人の範疇に収まる範囲で使える出力程度で破れる訳がない。
実際、無音のままで扉は揺れたものの、何かの攻撃は耐えきった。ふむ。音は遮断しているから聞こえないが、かなり動揺してるな? こっちから打って出る事は出来ないが、防衛は慣れてるぞ。
「(まぁまぐれでは無いし、
なので、そこから恐らく音が聞こえていたら、ガンガンドカンドカンと大変うるさくなる感じで何度も何かの力をぶつけられても、特段何ともなかった。私のステータスを上回るか、防御無視属性を持った攻撃で無いと突破は不可能だ。
何というかなりふり構わないなって感じだが、まぁそれはさておき。カーテンを閉めてしまったので外の様子は見えないが、耳を澄ませた感じ、街の方は大騒ぎが継続しているようだ。
まぁ、冷静に考えている余裕なんてないだろう。石は燃えないと分かっていても、実際炎の中に放り込まれて冷静に動くなんてのは、訓練をしていても難しいものだ。
「[癒しの雫
慈愛の雨
傷も病も分け隔てなく
鎮めて癒せ――キュアレイン]」
ではそんな、炎から自発的に発生したパニックを収めるにはどうすればいいか。……システム的には、環境由来であっても混乱の状態異常にかかってるって判定されるらしいんだよ。少なくともフリアド世界では。
魔法は通常通り使えたし、その効果は変わらない。それに相手は一般人だからな。回復量は微弱で状態異常を解除する効果も弱くたって、範囲が広い魔法の方がいいだろう。
それに魔法名通り、効果範囲には雨が降る。その雨粒に当たれば回復するという仕様であり、流石に雨が降ればちょっとは落ち着くといいなと思ったのもある。
――――ガン!
「ん?」
「ふぇ?」
見えなくても大体の位置に座標を指定して魔法を発動する事は出来る。それにこのお屋敷は、少なくとも比較的街の中心と言える場所にあるから、お屋敷の上空に中心座標を指定して正面の方に範囲を広げれば、大体範囲内になる筈だ。
と、思って一息ついたところで、大きな音が響いた。もちろん扉周辺の消音は解除していないし、防御魔法もそのままだ。ではどこから、と思ったら。
――――ドゴン!!
「きゃぁっ!」
さっきの音で目が覚めてしまったらしいアレリーが悲鳴を上げる。音源は、壁だった。続いた衝撃で大きく罅が入っている。何というか、いよいよお構いなしになって来たな。
だが、扉の前の気配は動いていない。他の気配が来た感じも無い。どういう事だ?
とは思ったが、まずはアレリーと白い石の保護が先だ。
「とりあえずは[シールド]」
「あ、え? なに……?」
「アレリー、起きて着替えられますか。騒ぎに乗じて、良くない人が入り込んだようです」
「えっ」
壁を指定して防御魔法をかける。壁の方が元が丈夫だからな。固定値+係数なんだから、罅が入っていても壁の方が丈夫だ。実際、続いた音は、ゴン、で済んだし。
それはともかく、一旦アレリーを動ける状態にした方がいいだろう、と判断して声をかける。良くない人が入り込んだ、と聞いて、さあっとその顔から血の気が引く。
まぁ、そうなるよな。けど。
「大丈夫です。あなたも、その石も、あなたが大事に思う相手も、この街も――何1つ取りこぼさず、守りますので」
私は、防御に関してはまあまあ自信があるんだ。
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