第2573話 73枚目:突破状況

 幸いこれも制御力もしくはステータスという事なのか、しばらくしたら見えている情報? の調節ができるようになった。うん。常に全部見るないし視る必要はない。

 精霊も随分細かいところまで見えるというか、はっきりくっきり見えるようになっていたが、これはまぁここまでと同じくらいで問題ないし。神の力の分布も、普段からそこまでくっきり見える必要はない。魔力の流れも同じだ。

 そして調節して、ついでに自分の周りがうっすら銀色なのにも気付いて、恐らく私はようやく自分の種族特性ってものを認識した。だって旗槍を持ったら、その銀色の範囲がぶわっと広がったからな。判定は領域スキルだから、旗槍を持つと効果範囲が広がる。


「慣れでしかどうしようもない、と、あのエルルをして言わしめた種族特性の制御が出来るようになるとは……」


 そして見えるのであれば、他の領域スキルと一緒だ。どう動かせばどうなるのかが分からないから操作出来ないのであって、目に見えるのであれば、操作の手ごたえも掴みやすい。

 結果、大体いつも通りの視界を確保しつつ、邪神やモンスター側の力場をピックアップする、という形に落ち着いた頃には、ちょっと苦労するが、種族特性も領域スキルの一種としてある程度範囲を動かせるようになっていた。

 これ以上は実際運用してみてからの話だからな。何せ邪神の儀式場や、モンスター側、いや、異世界側のテリトリーに踏み込んだ場合、視界がどうなるか分からないのだ。ピックアップする、強調表示されるようにはなったが、それで何も見えなくなっては意味が無いし。


「通常帰還した召喚者プレイヤーが確認されました!」

「先行部隊と後続部隊の両方がほぼ同時の帰還!」

「聞き取り開始!」


 みたいなことを、ついでにちょっと下がったところで力場的除染の手伝いをしながらやっていると、前線の方でそんな報告が上がった。先行部隊と後続部隊、あー、私の情報が入る前と入った後で、戻ってくるのがほぼ同時だったのか。

 まぁ内部は時間加速がかかっているし、短い時間で失敗を繰り返すと短時間で人数が増えていく。どこが最短かは分からないが、クリアするにはそこそこ時間がかかるからな。蟻を見つけて巣に行って、あの肉片を封じるか凍らせて燃やすまでは必須だ。

 ベテラン勢なら村人の介抱もするだろうし、なんなら家の修理ぐらいはするかもしれない。それに、冷静に考えると危ない場面がいくつもあったからな。難易度が高いのは確かだ。


「……あー、最短はそこでしたか」


 で、聞き取りが始まったって事は、と、司令部更新の全体連絡スレッドを見に行ってみると、失敗した時の情報というか、失敗になるポイントがずらっと並んでいた。特に先行部隊の方は、相当な数の失敗を繰り返すことになったようだ。

 なお、失敗の場合の最短は、なんとレーンズと出会った時だったとの事。ここで嘘を吐こうもんならそれを見破られ、盗賊の類と判断されて神罰執行されるらしい。まさかのだな。

 その後も、村人に怪しまれたら追い出されて失敗、何もしなければ飢えで倒れる村人が出て失敗、蟻を見つけてもレーンズの神罰執行を阻止出来なければ失敗と、かなり失敗ポイントが多い。こんな綱渡りしてたのか。確かに蟻を見つけた時の空気はヤバかったけど。


「とはいえ、失敗1位はやはりあの不意打ちの阻止のようですけど」


 あそこで大体失敗するようだ。それに不意打ちを阻止しても、全部で5体いるからな、あの肉片みたいなやつ。私は簡単に捕まえられたけど、ほら、私はステータスの暴力だから。

 結果、ベテラン勢でも5、6回の失敗を経て10人ぐらいが集まったところで、村人のケアとレーンズの護衛に分かれる事が出来るようになってようやく突破できたようだ。事前情報なしだとそうなるよな。何だこの選択肢を1つ間違えたら即失敗の難易度。

 逆に成功パターンを知っていた場合、問題になるのは不意打ちからの戦闘だ。ここは分かっていても難易度が高いし、1人だと厳しいのは分かっている。だが、実はレーンズをお腹いっぱいにする事で時間が稼げるのも確定したようで、そうやって時間を稼いで村人を元気にしてから行動すると、割と何とかなったようだ。


「……。しかし、うちの子が誰も戻ってきていないのは一体どういう事なんでしょう」


 いやうちの子に限らないんだが。住民の仲間は誰1人戻って来てないんだが。

 どういう事?

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