第2572話 73枚目:突破報酬

 結局レーンズの加護は貰う事になった。

 というかどうやら修神おさめがみも見習いとはいえ神である以上、守らなければならないルールという物があるらしい。そしてそのルールにおいて、ここまで活躍して美味しいものを捧げた私に何も無し、っていうのは、怒られる案件なんだそうだ。

 どうやら解決への協力と、アップルパイを始めとした料理が捧げものカウントされて、信仰値が一定を越えたって判定になるらしい。そしてレーンズの特殊能力は何と言ってもあの万華鏡のような目なので、目に関する加護なんだろうな、と思ってはいた。


「なるほど、アップルパイ」

「果物の加工品であれば喜ばれそうですね」

「しかし蟻が原因とは」

「その後の不意打ちを防ぐ難易度が高いかと」


 なお加護を貰ったところでふわっと足元が浮く感覚があって、突入した「家」の前に戻ってきていた。しゅっと司令部の人達が集まって来たので、とりあえず知り得る事をまず話す。

 そしてどうやら今回、時間加速はリアル1時間で3日相当になるようだ。私はリアル30分弱、内部時間2時間ぐらいで戻って来たらしいからな。なおかつ、通常空間に推定正規ルートで戻って来たのは先行組含めて私が初めてらしい。

 一応ログアウトしてリアル経由で情報を持って帰った人もいるのだが、その場合は実質死に戻りになるようだ。そして私の情報と、リアル経由で持ち替えられた情報を合わせた結果、今回はどういう形だったかというと。


「恐らく、正解するまでか、時間制限が尽きるまで戻れない。そういう制限の付いたステージだと思われます」

「内部では強制分断され、最初は1人で対処する事になるのが確定」

「1度の挑戦は加速状態で最大丸2日、時間切れか主役の脱落で最初からやり直し。やり直しの場合、同じ回数だけ失敗を繰り返したメンバーが集まった状態になる」

「加護が報酬という事は、恐らくその強度や効果に変化が出ると予測できますね」


 という事らしいんだ。……恐らくそれに加えて、村人の状態やレーンズへのあれこれで評価が上下するんだろうなとも思うが、まぁそれはいつもの事で予想できることなのでさておき。

 やはりレーンズ、万華鏡のような目を持つ神(見習い)の加護は、目に関するものだった。とはいえ、色が変わるとかそういう事も無いし、それこそ目からビームが出たりする事も無いようだ。少なくとも私に関しては。

 ただまぁ。ある意味、一番本質に近い、って事になるんだろう。その万華鏡のような目が持つ力の内、「みる」という行動に際して基本的に自動発動するそれ。


「……これは。ちょっと、慣れるまでは、まともに動けませんね……」

「となると、人数を増やして頭割りしておいた方が扱いやすい可能性が」

「恐らくちぃ姫さんの加護が最大スコアの目安になるでしょうから、自信がある場合のみを推奨として」

「そもそも一度加護を貰った状態で再挑戦できるかどうかの確認を」

「それは他のプレイヤーでも可能ですし」


 視界一杯、普段通り見えてる景色に、水彩絵の具をぶちまけたような状態になってるけど。しかもそのマーブル色がぐるぐる目まぐるしく入れ替わっていくから、身体アバターじゃなくて、中身の頭の処理が追いついてないんだ。

 恐らく、魔眼の一種なんだろう。パッシブで発動し、一目で魔力、に限らないな。土地の力場も分かるから、神の力も含む。その濃淡から属性まで分かるなんて、はっきり言って破格だ。だって今なら分かるからな。土地の力場的除染の進み具合が、どんなもんか。

 ついでにドス黒い多手多足の影みたいなものが後ろにくっついている召喚者プレイヤーも何人か見えてるから、あれはカバーさんにメールしてマークしといてもらおう。絶対あれ、“破滅の神々”の信徒だろ。やっぱり最前線にしれっと混ざってたか。

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