第2502話 73枚目:合流成功

 領域スキルの効果に誰かが気付いた瞬間、推定可愛い好き召喚者プレイヤーの狂乱ゲフン暴走がすごい事になったが、すぐに私本人が姿を見せたのでどうにか収まった。落ち着いてほしい。

 なおそうしている間にもどうやらリアル用事をちょっと置いてログインしてくれたらしいみのみのさんがとりあえず砦を1つ建ててくれたので(なおさて置くとダメな用事だったらしく、すぐログアウトしていった。感謝しかない)、それ以後はそこで待機だ。

 ちなみに待機中に分かった事と言えば、あの地面から生えている巨大歯車付きのアーム。あれ、動くらしい。近い距離に複数出現すると、根元がたくさんのタイヤみたいな配置の歯車に変わって、ゴリゴリ地面を削りながら移動していくんだってさ。


「元々訳の分からないやつでしたが、更に奇妙になってますね」

「ただその移動に巻き込まれると、まず助かりません」

「それはそうでしょう」

「なおかつ、周囲の大型モンスターは移動中のアームに召喚者プレイヤーを弾き飛ばす行動をとるそうです」

「……また随分とまぁ……」


 これを連携とは言いたくないなぁ……って感じだな。確かに最前線まで来れる召喚者プレイヤーなら、デカさ相応の力もあるモンスターとはいえ、ちゃんと防御が間に合えば受け身まで含めてダメージを最小限に抑えられる。だからこそ絶対に死ぬ攻撃、行動を押し付けるっていうのは間違ってない。

 間違ってないんだが、地面を削るという事は相応の重量があるって事だ。なおかつその重量は数で分散されている状態。つまり……その。ミンチよりひでぇや、という感じになるんだよな。

 確かに召喚者プレイヤー側も袋叩きにしたり罠を仕掛けたり相手がいる場所に壁系魔法を設置したりするが、だからと言って限度が……いやこっちも大概だったな。うん。まぁ。戦術的には正しいんだ。


「順調に学習してきた分を、しっかり反映してるって事でしょうね」

「そのようですね」


 合流組に混ざっていたカバーさんに相槌を貰った通り、問題は「ちゃんと戦術を使っている」って事だ。確かに前から、特に同じ種類から進化で分岐するタイプ、ゴブリンとかコボルトとかだな。連携してくるモンスターはいた。

 それに「モンスターの『王』」は、特に最後の2体だ。あいつらはちゃんと戦略を使ってきていた。だからそれを学習しているなら、連携を使って来るのは何も不思議ではない。

 不思議ではないが……厄介ではある。その非常に潤沢なリソースにあかせてゴリ押してくるだけでもかなり厳しいのに、ちゃんとそれを運用してくるとなると、難易度が一気に跳ね上がる。


「司令部の方でも、これ以後は戦術と戦略が用いられる可能性がある、と判断し、その前提で行動予定を決めているようです」

「相変わらず頼もしいんですが、その予定は、相手の手札1つで簡単にひっくり返るものでもありますからね……」

「予定も予備プランも、無いよりはマシかと」

「まぁ、そうですね」


 そうだな。どうせ備えられないからと無策でいくより、引っ繰り返される事を承知の上で、引っ繰り返される前提の用意をしておいた方がいい。それが空ぶれば最高なんだが、今までそういうのって無駄になった試しがないからなー。

 まぁ、だから、イベント初日からガンガン飛ばしているんだろう。何ならお盆休み、来週の土日に入るまでに、5枚目の陽炎のようなものの壁を突破する……推定本体がいる場所に辿り着くぐらいの予定をしているのかもしれない。

 もちろん陸で進むにしたがって、北と南の海もしっかり探索が進められている筈だ。後方の各都市や国家にも警告がいって、そちらに残った召喚者プレイヤーが見回り等で動いているという話も聞いた。……確実に妨害が起きている以上、どこに仕掛けられていてもおかしくないからな。

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