第2501話 73枚目:合流待ち

 元々私はいつものログイン時間より、半時間を切ったぐらいのタイミングでログインしている。内部時間では2時間弱というところだ。

 そのぐらいのタイミングでログインできるように召喚者プレイヤーはリアルの予定を調節しているだろうから、司令部の人からリアル経由で情報が流れれば、10分ぐらいは前倒しできるだろう。

 一方住民の仲間組だが、彼らは大半の召喚者プレイヤーが動けない日付変更線過ぎから未明までの丸1日を戦ってくれている。3枚目の陽炎のようなものの壁手前に、ある程度は砦と防壁が出来ている辺りその頑張りがうかがえるというものだ。


「その、住民と召喚者プレイヤーが入れ替わる隙間を、実に的確についてくれたことで……!」


 ガガガドドドドド! と無数の槍を乱射して、比較的魔法に弱いナマモノロボと酷い色の肉塊を沈めつつ、無属性の魔法を宿して大戦槌の形に変えた旗槍を歯車のアームに叩き込んでへし折る。

 普通に近づいて攻撃できるんならこんなもんだ。と、言いたいところだが、やはり手応え的にオリジナルよりは耐久度が低いらしい。耐久度か体力かは知らないが、何となく、柔らかい気がするんだよな。

 もちろん私のステータスも上がっているし、装備も大幅に更新されている。自己バフもしっかり乗せているので、当時と比べれば攻撃力はかなり上がっているだろう。


「だとしても、当時どれだけの召喚者プレイヤーがどれほどの攻撃を叩き込んだ、こと、かっ!」


 ひっそり忍び寄ってきていたスライムを避けて、その先で、ドゴォン! と、振り下ろされた白い人形の腕を避ける。そして腕の根元に当たる人形の足へ、避けた動きの勢いも乗せて、大戦槌型の旗槍を振り抜いた。

 バガァン!! と激しい音が響いて、だるま落としのように足を構成しているブロックが抜け落ちる。っち、殴り飛ばした先にスライムが回り込んでる、増殖されるか!

 それでも、私が原因で増える数より減る数の方が多い筈だ。精霊さんも全力で攻撃してくれているし、何より領域スキルの効果は通っているんだからな。若干減衰されているとはいえ。正直、攻撃力としてはこれだけで十分でもある。


「ただそれだと、主に歯車が潰せませんし……っ!」


 後は私もそろそろ動きたかった。デカいのを相手にステータスを存分に活用するのは楽しい。リアルの体もこれぐらい動かせればいいんだけどな。システムアシストが欲しい。割と真剣に。

 とはいえ、それだけ暴れまわったかいあって、3枚目の陽炎のようなものの壁からこっち、だいたい10mぐらいは空きが出来たんじゃないだろうか。少なくとも、地面から生えている歯車付きのアームは無い。

 そして時間も相応に経過している。具体的には私のログインから2時間ぐらい。それが何を意味するかって言うとだな。


『こちらカバー、ちぃ姫さん聞こえますか?』

『はい、聞こえました。おはようございますカバーさん』


 召喚者プレイヤーの稼働率が上がる、イベントの最前線を張れる召喚者プレイヤー側の主戦力がログインしてくるって事だ。

 ウィスパーが届いたという事は陽炎のようなものの壁がどこか1ヵ所は壊されたという事。モンスターと構造物の群れで埋め尽くされていた前のエリアに比べれば、巨大とはいえ動く相手ばかりのここなら周囲を見る事も出来るし、相手の動きで味方が来た場所も大体分かる。

 実際、私の方ではなく大陸の中心に向かって移動する大物がいたので、それを撃破しつつ移動していく方向へ向かうと、すぐに戦闘音が聞こえてきた。


「ちぃ姫どこー!?」

「ちぃ姫ー!」

「デカいの邪魔よ! ちぃ姫が見えない!」

「分かりやすいように拠点も作るッスよー!」

「ち゛い゛ひ゛め゛――――っ!!」


 ……。

 若干数名(?)私が単独で突入したって事で暴走してるっぽいな。

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