第2503話 73枚目:警戒進捗

 警戒しながら私は午前中に一度ログアウト。リアル40分程の休憩を入れて、再ログインした。スタートが早かったからな。ついでに妨害がはっきりしたから、午後のログイン時間を増やすことにした。ちょっとだけだが。

 いつものログインタイミングから時間をずらすっていうのもある。実際この朝はそれを(偶然)やって何とかなった訳だし。それにこれ以後はベテラン勢もそれなりに時間をずらすだろう。

 もちろんそれをやると、召喚者プレイヤーの瞬間稼働率が下がる。特に大人数で動く必要がある時、まぁ大規模戦闘だな。そういう時は不利になる。押し切れなくなるかもしれない。


「そう言う意味でも、本当に妨害がお上手な事で」


 さて邪神の信徒への警戒状況はともかく、3枚目の陽炎のようなものの壁を突破した先の攻略は順調に進んでいった。流石召喚者プレイヤーの稼働率が高い日曜日だ。……瞬間稼働率が高いってこういう事なんだよなぁ……。

 まぁ。午前中の終わりには手前側の砦と防壁も出来たし、午後の間に4枚目の陽炎のようなものの壁が発見された。そして夜のログインいっぱいをかけて、4枚目の手前に砦と防壁が、8割ぐらい完成した。

 半分と言ってもこれは意図的なものだ。何せ南北の端から建築を開始して、その厚みと設置された迎撃兵器の数は倍近く、大陸の中心当たりに隙間を空けているという形だからな。


「それに私は最前線に居ましたが、後方の砦と防壁も強化されているようですし」


 砦も防壁も、そこに人がいてこそその防御力を十全に発揮する。だから人の少ない時間を狙われると、どうしたって防御力は落ちる。のだが、これだけしっかり作ってあれば、単独でもまぁまぁ耐えるだろう。

 力場的な防御はそもそも儀式場を作ってそこに領域スキルを移したりして張ってあるから、物理的な防御力を上げればかなり持つ筈だ。過剰防御ではあるし、もっと後ろの、土地を取り返す工事が追いついた時はちょっと大変になるが。

 まぁ、そこに砦や防壁があったとしても、ちゃんと解体すれば建材の山には違いない。戦う為に作られたものが生活する為のものに作り替えられるっていうのも平和でいいじゃないか。そういう事にしておこう。


「うーんそわそわする」


 そこまでやったところでログアウトだ。お盆休みは次の土日からなので、この月曜日から金曜日までは平日と同じ稼働率になるだろう。私を含む学生は除くが。

 とはいえ、私がスタートしたのが高校1年生だったからな。それが今や大学4年生だ。少なくとも第一陣では最年少枠だろう。早生まれなら中学3年生も含むかもしれないが。

 その決戦が目の前に迫ってるんだなぁ……。と今更ながらにしみじみしながらどうにか寝て、翌朝。昨日と違って起きるのは若干遅くなった。寝坊って程でもないけど寝付くのが遅かったか。


「寝る前に考え事しすぎるのは良くないな……」


 それでもまぁいつもの時間の内なので、気持ち駆け足で朝のルーチンという名の日常を送って、ログインだ。いつもの時間からは5分ぐらい遅れたか。

 まぁ時間をずらすのは司令部も許可を出していたし、そういう事にしよう。と、司令部更新の全体連絡スレッドとクランメンバー専用掲示板を確認。とりあえず今、そうしながら耳を澄ませた範囲では特に何か起こったって感じではないが。


「……。とりあえず大丈夫な感じですね。この辺りも、工事現場も、それより後方も南北の海も、今のところ不審な動きは無い、と」


 今日は大丈夫だったらしい。まぁ同じことを何度も繰り返せば、発見されるリスクは上がるからな。

 しかし、警戒しなきゃいけない範囲が広いな……司令部は本当に大変だ。もちろん、外部との協力もしているだろうけど、どれだけの情報を処理しなきゃいけない事か。すごいなぁ。

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