第2494話 73枚目:進んだ先

 まぁ「築城の小槌」についてはともかく、そのまま順調に午後は過ぎて行った。イベント初日にしてはだいぶ進んだのでは? と思いたいが、まだ壁を1枚突破してそのすぐ内側に拠点を作っただけとも言える。油断は良くないな。

 それに夜になれば召喚者プレイヤーの稼働率は一段と上がる。私は拠点作成と土地の力場的除染にかかりきりだったが、それこそ「第一候補」が動けるようになれば、効率は更に上がるだろう。

 というか、拠点周辺の力場的除染を「第一候補」が担当し、私はエリアの奥に進むって可能性もあるな。やっぱり密度が高くて、日中の召喚者プレイヤーの人数だとちょっと押し込み切れないみたいだったし。


「ふむ。私は変わらず拠点周辺の補助……まぁそうですね。領域スキル持ちは私以外にもいますし、一撃が大きいタイプのアビリティを連打していればいいだけなら、まだ何とでもなりますし」


 そんな事を考えつつのログインだったが、私のやる事は変わらないらしい。まぁそうだな。更に陽炎のようなものの壁も壊されて突入口が増えているし、とにかく広範囲に大火力で攻撃すればいいんだったら、手段はいくらでもある。

 それに召喚者プレイヤーの稼働率が上がった事で、全体的な人数が増えている。なので非常に順調に攻略は進んでいるようだ。私が見つけた構造物の耐久度を引き上げるモンスターも、構造物の耐久度がやたら高い場所から居場所を推測、発見次第討伐されているようだ。

 これ、何の情報も無くやけに耐久度が高い構造物の塊があったら、何かしらのギミックを疑ってただろうな。相手はモンスターなのだが、それが分かっていなければ構造物そのものを調べる方向に回っていたかもしれない。つまり、時間がかかる。


「ボックス様と“ナヴィ”さんには本当に感謝ですね……」


 まぁそれは分かっていない時の可能性であり、今は耐久度が高い場所には人数を集めて、飽和火力で構造物ごと吹き飛ばすって事も出来るからな。実際、モンスターと構造物の群れの中で、特定のモンスターを探して撃破っていうのは難しいし。

 それなら周辺諸共吹き飛ばしてしまった方が早くて確実だ。どうせ耐久度が高い構造物をそこから出現し続けるモンスターの群れと一緒に相手しなきゃいけない以上、火力は必要なんだし。

 なのでほとんど止まることなく、順調に奥へと進めているらしい。防壁の建築は、流石に大陸を縦断する規模なだけあってまだかかりそうだが、結構な距離を進めたようだ。


「おや、全体連絡スレッドが……あー、やっぱりですか」


 なので、内部時間3時間ぐらい経った頃だろうか。これも人数が増えたからか、1時間に1回ぐらい移動しながら司令部更新の全体連絡スレッドを確認していたんだが、そこに新しい書き込みがあった。

 それによれば、どうやら突出して奥地、東側へ進んだパーティ、じゃないな。クランが、その先に陽炎のようなものの壁を発見したらしい。あるんじゃないかと思ったが、やっぱりあったか。

 そのクランは発見したところで進むのを一時停止、陽炎のようなものの壁手前のモンスターと構造物の群れを蹴散らすことに集中し始めたらしい。そうだな。場所を開けるのは大事だからな。


「あの一撃まで同じとは限りませんが、警戒するに越した事はありませんからね」


 つまり、そっちでも建築工事が必要って事だ。流石に優先度はこっちの、1枚目の陽炎のようなものの壁を越えた場所の防衛ラインが上だろうが、あちらにも砦と防壁は必要だろう。

 まぁ、いつもの事っちゃいつもの事だな。最前線での戦闘より、その先に進む為の拠点づくりで忙しいっていうのは。実際、奥に進もうと思えば拠点と防衛ラインと補給はとても大事だし。

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