第2486話 73枚目:要注意攻撃

 流石に既に見た攻撃をもう一度馬鹿正直に食らう召喚者プレイヤーではないし、司令部ではない。私はエルルに乗せてもらって一気に後方の砦まで戻ったが、道中は穴を掘ったり物理寄りの壁系魔法をこれでもかと重ねたり、少なくとも即死待ったなしの威力がそのまま通らないように工夫しているのが見えた。

 そして響き渡る、派手な破砕音。私は前回食らっている事から、もしかしたら領域スキルがズタズタになったからあんなダメージが入ったのでは? と予想して、砦に到着した時点で領域スキルを切っておいた。

 その予想と判断は正解だったらしく、今度はダメージを受けずに済んだ。良かった。陽炎のようなものは空間属性がついている筈だからな。領域スキルへの干渉ぐらいはするだろうし。


「……まだ未確認情報ですが、今のあれはやはり、あちら側に踏み込んだのが切っ掛けだったようですね」

「そこまで押し込めてはいたのか」

「領域スキルの保有者を中心に動いている組が先行しているのは知っていました。まぁ先行すると言っても、全体から見れば誤差になるでしょうけど」


 あの陽炎のようなものが砕ける事による超広範囲高威力の攻撃は、それでも攻撃時間自体は一瞬だ。だから防御して凌ぐことに成功した召喚者プレイヤーは即座に攻撃を再開しているのだが、私はその前にちょっと情報を確認する事にした。

 まぁでもあの攻撃の直後だから、司令部も被害状況の確認や砦の補修指示で忙しい。足を踏み入れた召喚者プレイヤー当人がどうなったかというか、防御が間に合ったかどうかは分からない為、確認が取れない部分もあるのだろう。

 ただ、攻撃をもう一度見た事と、発生したタイミングから分かる事もある。司令部本当にすごいな。


「……なるほど。ちまちまやっているとあの壁を作って砕く力を溜められて、足踏みさせられる訳ですね」

「こっちの土地への浸食だけじゃなくて、そんな事もしてるのか」

「まだ推測ですけどね。情報は足りてません」


 でも司令部が発表したって事は、まぁまずそういう事なんだろう。本当に難易度が高いな。だってあのモンスターと構造物の群れを、結構なスピードで無限増殖していくやつらを、一定時間以内に一定まで削らないと、あの超広範囲高威力の攻撃が何度でも飛んでくるって事だろ?

 もちろんその、大技につきもののチャージ時間は分かっていないし、チャージが完了した瞬間に向こうに踏み込んでいたらどうなるかも分からない。最悪、空間的に閉じて力場的負荷がものすごくかかる状態で突入組が耐えて、その間に陽炎のようなものをちゃんと破壊する、とかいう事になる可能性もある。

 なお悪いのは、そういう、こう、エリア分けというかブロック分けというか。そういう感じに分けられる数が、恐らく1つ2つではない、って事だ。


「詰め合わせ状態が継続されるとして、建造物のボス格と、建造物由来の大物、眷属的な中ボス、仕掛け的な中ボス、劣化本体で、あと5段階ぐらいはあるでしょうか……」

「お嬢?」

「あの陽炎のようなものの壁、たぶんあの1枚だけじゃないと思うんですよね」

「……あれが何枚もあるのか」


 劣化本体と“呑”む本体の間にもう1枚あるかもしれないし、どこかが亜空間的なものの中にあって壁が無いかもしれないんだが、そこは実際そこまで辿り着いてみないと分からないからな。

 ただ、最初の1枚だけって事は絶対に無いと思う。何故かと言えば、ラスボスっていうのは変身したり仕切り直ししたりそのついでにステージを変えたりするものだからな。若干の偏見を含むが。

 それに、ここから先は言わば最終章の最終ステージだ。ここまでどれだけ難易度が高い割に情報の出し方が下手なギミックを解いて来たと思ってる。フリアドの運営が、ここにギミックを仕掛けてない訳がないだろうが。


「情報が足りない、という前提で動くべきですね」

「多少の不意打ちは食らう前提か?」

「ここまでの戦いを学習した元凶ですよ。有効な手は絶対に使って来るでしょうし、こちらを削る手段は問わないでしょう」


 まぁ元凶っつか運営がだろうが。

 いや、元凶こと“呑”むも元は異界の大神なのが分かっているんだから、それこそ分霊と同じく独自に学習したって可能性もあるのか。

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