第2485話 73枚目:攻略序盤

 領域スキルの効果が通るのなら、神の力も通るって事だ。なので、盛大に広域範囲攻撃があちこちから叩き込まれている。そうだな。ベテラン勢なら警戒しているだろう。何せここまでのレイドボスは、既に「攻撃の反射」と「特定属性の攻撃の無効化」を使ってきたからな。

 この「モンスターの『王』」の能力詰め合わせ状態を見ても、これまでのバックストーリーを見ても、絶対にこのモンスターと建造物の群れの奥にいる“呑”むと呼ばれるラスボスは、その能力を学習、扱えるようになっている。

 だったら攻撃が通る間に使えるだけ使ってしまえ、って話だ。使えるって事は使わなきゃどうにもならない事だっていう部分もあるけど。だから私も単身前に出てるんだし。普段ならルイシャンぐらいは一緒だぞ。


「ルイシャンすら戦力としてカウントしないといけない程なんですから、相手の数が多すぎるんですよね」


 いやまぁルイシャンは普通に戦力として大きいんだが。その機動力も当然として、ますます最大出力が上がったあの雷が通常攻撃だからな。神獣は精霊獣からの特殊条件進化なので、精霊の力でもあるから、まーよく通るんだ。

 さてそんな感じで、夜中の遅れを取り戻そうと盛大に火力が叩き込まれていけば、それなりのペースで最初の、陽炎のようなものが壁になっていた距離まで近づいて行く。

 その奥へ踏み込むのが目的なのだから当然だが、流石に元々建造物群があった場所だと耐久度がぐっと上がっているようだ。周囲の召喚者プレイヤーが攻撃するペースはそのまま、歩みが遅くなったらしい。


「まぁ、私の領域スキルは割合ダメージ計算になってるようですからね……」


 そうなると、その広さで押し込んで、ゆっくりとはいえ変わらないペースで進んでいた私が前に出る事になる。他の場所でも、領域スキル持ちとその周囲の召喚者プレイヤーが前に出る形になったようだ。

 前に出ると言ってもお互いの距離は相当に離れているし、大体の足並みは揃えている。だから前に出ると言っても全体から見れば誤差なんだが、8月1日は木曜日だ。そして現在は、その午前中である。

 つまりベテラン勢の内社会人勢はログイン出来てないんだよな。むしろ今姿が見えるのはほとんどが学生だろう。で、何が言いたいのかって言うと、召喚者プレイヤーの平均年齢が低く、後続組がほとんどって事なんだ。


バヂンッッ!!!

「っ!?」


 派手に弾かれる音と手応え、領域スキルが強引に押し戻される感覚。流石に若干のダメージは入ったが、問題はその原因だ。

 私は一定ペースで進んでいた。それでも最初に陽炎のようなものがあった場所まで、まだ100m以上はあるだろう。だが全力で展開している現在、領域スキルの何割かは向こうの領域に入っていた。

 その向こうでも調子よく建造物が壊れて行って、モンスターが自滅する様子を見ていたから、よしまだ通じるな、と、地図を見ながら距離を調節していたのだが。


「――――総員、防御!!」


 その目の前に。恐らく最初に存在していたのと全く同じ位置へ。

 陽炎のようなものによる壁が、復活していた。

 何故かは分からない。だが恐らく何かフラグを踏んだのだろう。例えばあの陽炎のようなものがあった位置の奥へ踏み込んだとか。だが今は原因を追究している場合じゃない。


「遮蔽物の影へ!! 物理魔法共にありったけの防御を重ねて下さい!!!」

『お嬢!』


 陽炎のようなものが復活したって事は。

 高確率で、あの生身だと即死不可避の超広域全体攻撃が、もう一発来るって事だからだ。

 おのれ運営、いよいよ本気でクリアを阻止しに来たか!? そんなに最短ペースでメインストーリーが達成されるのが嫌か!? いやもちろん何か理由があるのかもしれないけども!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る