第2478話 72枚目:イベントのお知らせ

 流石に事前準備であの薬膳スープと煮込み肉は作らないが、「希釈液」はあるのでポーションは全力で作っていく。お札は、何が来るか分からないからな。過酷な戦いになる事だけは分かっているのだから、絶対に使うものを少しでも作っておいた方がいいと判断した。

 備蓄にしろ販売にしろ、本当にいくらあっても困らない。倉庫の素材を空にする勢いで作りまくったぞ。それでも気が付いたら素材が増えている(主に鍍金の竜とか多頭の蛇竜とか)のは……まぁ、訓練してるんだろう。

 普通の薬草もちゃんと取って来てくれているから、一応大丈夫だ。鍍金の竜のお肉でハムとか作ってやろうかとも思ったけど。絶対美味しいぞ? きっと効果もすごい事になるけど。


「冷静に考えれば、それこそあの百頭の蛇竜の肉をベーコンにでもして、「小さな模造の魔臼」を使えば良い気もしました」

「あれ食べ物にも対応してるんすか?」

『スープは薄くなったと聞いていますわ。もちろん器はなく、そのまま溢れ出してきたようですけれど』


 まぁそれは後でやるとして。私の頭の上にフライリーさん。と、その上に積み上がる精霊獣達。私の膝の上にルイシャンの頭。と、その上に帽子みたいに乗っかるマリー。という形で、イベントのお知らせを見て行こう。

 流石にラスボス戦だから真っ向勝負というか、正面からの戦闘。戦略はあっても大陸の一部、世界全域への影響はあっても戦闘に巻き込まれるなんて事は


「フリアドの運営がする訳ないですね」

「むしろ一周して開き直った気配すらあるっす」

『最後は派手に行こうとでも思ったのでは?』


 うん。する訳が無かったな。

 とりあえず、バックストーリーを確認しよう。



 ひとまず、大凡本来存在していたのと同じだけの精霊が解放され、ついに召喚者達はここまでの力の流れにおける源であり、全ての元凶が座す場所へと辿り着いた。

 しかしそれは、全ての元凶からしても直接影響が与えられるようになったという事でもあった。空間の歪みを介しての神殿への影響、試練のような物の発生、そこから湧き出てくる大量のモンスター……最初に世界に異常が起こった時と同じ規模で、モンスターが出現する可能性すらある。

 また、全ての元凶であり、世界を渡って襲来しただけはあり、空間の操作にも長けているのは明らか。よって神々は最後まで油断しない事を確認し合い、相談し、案を出しては検討し、その結果を託宣として、召喚者へ下すのだった――――。



 はい。


「つまりやるって事ですね。大量の野良ダンジョン発生からの小規模スタンピート及び神殿への影響と乗っ取り。最前線で亜空間の攻略をしながら同時並行で対処しろと。何なら世界規模でモンスター側の力場の影響が出るところまでやりそうなのは気のせいでしょうか」

「イベントダンジョンかイベントステージかは知らねーっすけど、空間の操作に長けてるって事は絶対用意してくるっすよね、特殊亜空間。そしてそれを攻略しないとどうにもならんやつっす。全く同じなのは連続でやらないとしても、突入の条件付けはやってきそうっすね」

『ここが一番難易度が高くて納得なのだから、と、ここまで出てきたものはもちろん、出てこなかった初見殺しも、それこそ全力で盛り込んできそうな気がいたしますわね? 流石に倒せなかったレイドボスまでは無いでしょうけれど、その一部能力の再現ぐらいはするのでは?』


 っていう事だな。お陰で召喚者プレイヤー側は全員滅茶苦茶に忙しいよ。私も、ここまでの間ポーション作成に集中してて良かったって思ってるし。何せポーションなら、一般住民兵士にも使えるからね。消耗品なんだから、いくらあっても足りないだろう。

 丸1ヵ月、内部時間だと4ヵ月の長丁場だ。私はポーションだが、食料だって必要だし防壁の強化やその補修材料だって絶対に足りない。竜皇様おとうさまが号令を出して、第4番隊以下の部隊を建設工事の応援として出しているぐらいだからな。

 御使族も各地の神殿を回って、儀式的な補強は出来るだけやってるって話だし。不死族は分からないが、それでも動いてないって事は無いだろう。


「既に総力戦は始まっているんですよ」

「準備も戦いっすからねぇ」

『戦いというのは事前準備で半分、そして最初の一撃で半分決まるという言葉もありましてよ』


 ……流石にそこまで極端な事にはならないだろうが、事前準備はとても大事だからな。

 さて、私もポーションづくりに戻るか。実際イベントが始まったら、それどころじゃないだろうからな。

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