第2474話 72枚目:ボーナスタイム

 うちの調理場は広い。かなり広い。何せ食べる人数が多い上に、1人当たりの食べる量も多いからな。一応竜族部隊の人達がいる場所にも調理場はあるし、何なら研究施設にも設備自体はあるんだが、何だかんだここで作って持って行くことが多いから。

 それにソフィーナさんがいるんだから、その実力を十分に振るってもらう為に、かなりガッツリとお金をかけている。設備もともかく広さも便利さも相当な水準だ。

 流石にリアルで言う、建機を使った煮込み料理が出来る程ではないが、それでも5段重ねとかになる結婚式で出てくるようなケーキぐらいは作れるだろうし、ケバブだって世界記録を狙えるサイズが作れる。


「それがフル稼働って時点でどうかと思うんですよ。ちょっと人数足りませんけど」

「エルルさん達はそっちにいった分霊を何とかしてるメェ」

「料理できない人は材料の調達を頑張ってくれてるメェ」


 総力戦じゃねーか。なおヘルマちゃんは案の定、増え続ける分霊に対して服を作って着せてくれているらしい。アリカさんはアリカさんで、どうやらまだちょっと認識の甘い分霊が食べてしまった食器を補充するので忙しいようだ。

 さて私はまず完成した料理を置く場所に手持ちのご飯を全部出して、それをルージュが持って行っている間に、例の薬膳スープを作り始めていた。前に作った時は試作って事もあって普通に作ったが、【料理】スキルには例によって色々工程を短縮するアビリティがあるからな。

 それを使ってしっかり説明文に「お腹ははちきれかねない」と書かれているのを確認。お肉を取り出した鍋ごと持っていかれるのを見送り……しっかり薬草の効果が染み込んだ煮込み肉は、今回は素直に軽く焼き目を付けて、ステーキにして出すことにした。


[アイテム:鍍金竜の煮込み肉ステーキ

消耗品:料理(HP回復+*50・MP回復+*30・SP回復+*100・HP継続回復+*30・MP継続回復+*10・SP継続回復+*50・空腹回復+*80・渇水回復+*10)

耐久度:100%

説明:鍍金竜と呼ばれる竜の肉を多種多様な薬草で煮込んだ肉で作られたステーキ

   伝説の回復薬に相当する効果を持つが、お腹ははちきれる

   継続効果:3時間]


 流石肉本体というべきか、説明文が「はちきれかねない」から「はちきれる」になってしまったが、まぁ、今の分霊達にはこれぐらいは必要だろう。ステーキサイズに作ったからこの回復量なんだろうし、料理の効果っていうのは基本的に完食した時の効果だから。一口ぐらいなら大丈夫。たぶん。

 一応サイコロステーキの形に切りなおしてから持って行ってもらったので、たぶん大丈夫。あの人数だから。いや人数じゃなくて柱数か。よし、どんどん作っていこう。


「というか、エルル達の方にもいってるんですね。それだけ増えたんですか?」

「そうメェ。昨日の朝にはいつもの子がいなくなってて、別の子が来てたメェ」

「最初は汚れてたけど、お掃除の魔道具を設置してからは綺麗な状態で増えてるメェ」

「別の分霊なのは確定なんですね。まぁ食器を食べる個体がいるって辺りでそんな気がしましたけど」


 なおそのまま聞いたところによると、どうやら今回の分霊はある程度食べるとふらっと姿を消して、そして気が付いたら+1の数がふらふら出歩いている、という感じで増えているようだ。

 ただそのある程度というのが、【成熟体】になった竜族10人分ぐらいらしい。食べるって言うか回復したに近い気がするメェ、と双子は付け足したので、恐らく1柱辺りのキャパシティというのはあるのだろう。

 まぁでもお世話しないって訳にはいかないというか、食事を提供するのが間に合わなければ畑の野菜や果樹園の果物を直接食べに行ってしまうので、双子の方でエルルに応援を頼み、そのエルルも最初、こちらの調理場で料理を作っていたとの事。


「ただしばらくしたら、副隊長さんがあっちのご飯食べるところに分霊が来たって報告しに来たメェ」

「しかも隊員さん達のご飯を勝手に食べちゃって、それで増えていたから、エルルさんはそっちに行ったメェ」

「あぁ、それは戻りますよね。仕方ないです。というか、こっちで出来るだけ作って早くあっちにも応援に行くべきですね」

「そのスープとステーキならいけそうメェ」

「ただそれもその内限界がきそうメェ」

「それまでにどれだけ蓄えを作れるかが大事ですね。頑張ります」


 という事は、結局何故分霊が増えたのかは分からないって事だな。まぁ分からないか。カバーさん辺りが調べてくれるか、元『本の虫』組の誰かが状況を把握して情報を出してくれるのを待とう。

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