第2473話 72枚目:決戦結果

 跳ね回り振り回し、文字通り大暴れといった状態のレイドボス「均し富める模造の禍臼」及び「縛り連ねる外法の綱禍」だったが、それでもまぁ何とかなるものだ。

 というか、途中で「均し富める模造の禍臼」本体の底部分には黒い綱が無い事に気付き、私がルウに鉄球の予備を1つ貰って、底がこっちを向いたタイミングで思い切り投げつけたからな。

 重量物かつ私の全力投擲だ。凄まじい音が響いたがダメージはそれ以上だったらしく、石臼の下部分が半分に割れて、その場に落ちた。「縛り連ねる外法の綱禍」がどうにかしようともごもごしていたが、どうにもできなかったようだ。


「まぁそこからも面倒でしたが、流石に跳ね回る為には下部分は大事だったようですし」


 だから、どうにかその場で横倒しになって止まったんだよな。もちろん黒い綱は振り回されるんだが、その根元が動かないなら脅威は半減かそれ以下になる。いや、跳ね回っている状態が厄介すぎるだけで、普通に強い事は強いんだが、対処できるレベルにはなった。

 あとは、あれだな。モンスターを召喚する石や魔法陣になる切れた綱。あれは、石にしろ切れた綱にしろ、風魔法で綱の圏外に吹き飛ばしてしまうって方法を見つけてからは、微々たるものとはいえ回復が完全に止まった。何せ出現するモンスターは、綱の届かない場所で倒されるからな。

 まぁ石臼の割れた部分から、触れたものを増幅してコピーするあの黒いものがドロドロ流れ出てきたんだが……これも誰が考えたのか、ただの氷を放り込む事で、大量の氷が転がり出てくるだけとなった。ただの氷ならどうとでも出来る。


「まぁそれでも、撤退はかなりギリギリになった訳ですが」


 で、慌ててクランハウスの島に引き返し、明日は休み! と皆に伝えてログアウト。あぁ間に合って良かった、と全力でほっとした状態で、リアルでもさくっと就寝した。

 そして翌日。日曜日なので午前中のいつもの時間にログイン。イベント期間は今日一杯なので、恐らくいつものパターンなら既に異界の大神の分霊が領域への入口を開き、双子辺りがそこにお掃除魔法を連打し続ける魔道具を設置してくれている筈だ。

 と、まずは食堂に移動したら。


「…………何ですか、この人数は」


 無言だがもくもくとご飯を食べ続ける分霊が、わらわらいた。服はそれぞれ違うがちゃんと着ているが、気のせいか、サイズが全員、いまうちにいる本来の分霊より一回り小さい気がする。

 あるいはこれが最初の大きさで、つまり一回り大きくなるぐらいに回復したのか? とも思うが、そうではなく。

 というか、お皿がふわふわ移動しているのは何だ。……あ、よく見たら全部金属製のお盆に乗ってるのか。という事は、あれをルージュが「装備」して動かしてるんだな。それぐらいしないと間に合わない人数だと思うけど。


「庭主様! 料理を手伝って下さいメェ!」

「庭主様! ご飯が全然間に合いませんメェ!」

「あぁ、ええと、とりあえずお菓子籠を設置すればいいですか?」

「「お願いしますメェ!」」


 しかし何でこんな増えた……? と入口の所で理解が追いつかないでいると、調理場の方から双子の声が聞こえた。あ、うん。うちのメインコックさんことソフィーナさんはまだログインしてないみたいだしな。

 その声に応じる形で、空の大きな平皿がテーブルの上に置かれたので、その上でインベントリの中に入れていた「お菓子籠」を引っ繰り返す。ドザザーっと大量のお菓子類がこんもりと山になって……数秒と持たずに高さが半分になった。嘘だろ。

 そこへこちらもルージュの「装備」だろう、こう、十手をもう少しマイルドにしたような道具が2つ空中を滑って近づいてきて、そのお菓子を山にしたお皿の上で止まった。意図は理解したので、そこに引っかける形で、逆さまにした「お菓子籠」を固定する。


「しかしこれ、本当に何故増えたんです……?」


 この勢いだと「お菓子籠」ですらそう長く持たないかもしれない。そう思って、わらわらしている分霊にぶつからないようにしつつ調理場に移動する。タイミング的にボーナスタイムの内容がこれなんだろうが、何故増殖の方向なんだ?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る