第2472話 72枚目:瀕死行動

 レイドボス「縛り連ねる外法の綱禍」と「均し富める模造の禍臼」の残り体力バー(3段目)3割が1割まで減るまでの時間は、1時間だった。全体カウンター攻撃がこちらにとっても援護射撃になってたからな。ここまでで一番早いんじゃないか? 流石にイベントダンジョンを燃やしていた時のペースは見て無いし。

 ただしこちらの残りログイン時間も約2時間。人によってはそろそろ撤退しないとまずいだろう。この戦力が維持できるのは精々あと1時間程度だろうか。その間に決着をつけないとまずい。

 ……ん、だが。


「確かにオリジナルもやらかしましたが!!」

「ピュィイ!!」


 土地を取り返す工事が間に合ったか、或いは流石にここまできたからか、領域スキルを吸収する事は無くなった。だから私も前に出ているというか、出ざるを得なかったんだが、そのサイズで跳ね回るなレイドボスが!!!

 それはオリジナルの、「均し富める模造の魔臼」の時でも悲鳴及び犠牲者多数の行動だっただろうが!? そうなっただけでどれだけ時間がかかったと思ってる! しかも本体にしっかりしがみついている「縛り連ねる外法の綱禍」が、これもオリジナル同様黒い綱を束ねたものをぶんぶん振り回してるんだぞ!?

 モンスターの召喚が止まったからか、黒い綱に触れても装備がカード化されるって事は無い。だからこうしてルイシャンと一緒に走り回って迎撃も出来るが、ちょっと待て!!


「しかも時々しっかりと先端に岩が用意されている事もありますし、うっかり地上に受け流すとそこで小型ドームを形成してモンスターの召喚を始めますし……!」


 ドームになった状態だと、まぁ、中央の岩にカード化した毒の類を投げつければいいだけなんだが、それでもこの状況でモンスターが召喚されるっていうのが既にアウトだ。戦場全体を含む事が出来る全体攻撃を連打されてるようなものだからな……!

 一応こうやって、主に岩を持った綱の先端を上へ弾き飛ばすことで迎撃しているし、それで岩が砕けたりしてダメージにはなっている。黒い綱はちゃんと太さが10㎝以下の部分を狙わないといけないし、それ以外だと石臼である「均し富める模造の禍臼」本体を狙わなきゃいけないんだが、その本体は現在元気に跳ね回ってるんだよなぁ!

 もちろん黒い綱が振り回される範囲は空中も含む為、ろくに近づく事が出来ない。かといって、黒い綱でしっかり覆われている、あるいは黒い綱ががっつりしがみついているため、石臼に張り付くっていうのも難しい状態だ。


「それでも何とか狙って攻撃を通しているのは流石だと言えますが……っ!」

「ピュイッ!」


 ちなみに砕けた岩や切れた綱は地面に落ちると、こちらも変わらずモンスターを召喚し始める。ただしレイドボスは召喚したモンスターの事など気にかけていないので、放っておいても振り回される綱に薙ぎ払われて倒されているんだが。


『――全体連絡!! レイドボス「縛り連ねる外法の綱禍」の綱及びレイドボス「均し富める模造の禍臼」の岩に当たって倒されたモンスターの数だけ、対応するレイドボスの体力が回復している事が確認されました!!』


 ……。

 は?


『よって、召喚されるモンスターは可能な限り討伐して下さい! また壁系魔法等に臼が接触した場合全体攻撃となります! 各個撃破をお願いします!』


 そんな情報と指示が、拡声された司令部の人の声で伝達される。は? モンスターをレイドボスが倒すと回復する? この、暴れまわって常にレイドボスの攻撃にさらされてる状態で、ダメージを与えると召喚されるモンスターを?


「ちょっと待てやレイドボス!!」

「いや運営!!」

「クリアさせる気ねぇだろ!!」

「来月決戦だろうが!?」

「難易度はちゃんと適切に調節しろやぁあああああ!!」


 ほんっっっとにな!!!

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