第2469話 72枚目:段階突破

 これは後で、そう、「大神の悪夢」で再現レイドボスとして出てきた時に検証して分かった情報だったようなのだが。あの、レイドボス「均し富める模造の禍臼」の一部である大きな岩。あれに、回復薬とか真っ当な装備とか、そういう役立つものをカード化してぶつけた場合は、どんな利点があるかって話だ。

 真っ当な装備の場合は、その装備を身に着けたモンスターが召喚される。つまり、装備の増殖が出来る訳だ。まぁ流石にある程度モンスター側の力に染められているので、除染は必要だが。

 だが回復薬とかの場合は、その主となる素材、例えば回復薬なら薬草とか、そういう材料を確定で落とすモンスターばかりが召喚されるようになるらしい。そう。素材の大量入手チャンスでもあった訳だ。……まぁ私はどちらかというと、安心したぐらいだが。


「え? なんで?」

「主体となる素材が確実に手に入る相手が出てくる。という事は、例えば鍍金の竜の素材を使った回復薬やスープを使っていたとしたら」

「分かった! 酷い事になるね!」


 と、サーニャですら一発で理解してくれるぐらいだ。危うく戦犯になるところだった。「囲い抱える飽溶の水禍」の時の「第四候補」を言えないぐらいに。

 なお検証班もその事に気付いて、実際どうなるかを試してみたところ、割と大惨事になった訳だが、それはまた別の話だ。


「あぁ、あの盾分体、残り体力7割から5割の行動だったんですね」


 主に毒によってモンスターの群れを削り切られ、それに応じてリソースもごっそり持っていかれたレイドボス「縛り連ねる外法の綱禍」。まだその中か亜空間にいる筈の「均し富める模造の禍臼」は見えないが、それでもかなり体積は減ったと言えるだろう。

 どうやらあの司令部仮称盾分体は、残り体力バー(3段目)が7割になった時に、自ら5割まで削る事で出現させるものだったらしい。そしてその間は回復に専念する。だから仮称盾分体の撃破に時間がかかると、ずーっとそこで同じ行動を繰り返すことになるようだ。

 まぁギリギリ阻止出来たし、次の仮称盾分体が出る前に残り体力バー(3段目)が半分を切ったから、無限ループからは無事抜け出せたんだが。


「だからといって、その次の行動がそれよりも難易度が低いと言えば、それはまた別の話になる訳ですが」


 むしろあれは難易度が上がってるよな。と、相変わらず領域スキルは吸収されるため、「縛り連ねる外法の綱禍」の黒い綱が届かない余裕をもって領域スキルを展開している後方から見ている現在、召喚者プレイヤーと住民の仲間が戦っているのは、相変わらず無限に溢れ出てくるモンスターの群れと……そのモンスターの群れを黒い綱で結び合わせた、巨大なモンスター(?)だった。

 恐らく黒い綱だろうものの太さ自体は糸と呼んでいい程度に細い。それに結び合わせるというより、目が粗く立体的な網を編んで、その隙間にモンスターを詰め込み、不格好な人形に仕立てた、という感じだ。

 これの何が厄介かというと、モンスター同士が融合した訳では無いから核と呼べるものがなく、モンスターのままではあるので足元からあっという間に補給されるって事だ。端から削っても追いつかない。


「たぶん、モンスターを捕まえているか固定している、黒い綱というか黒い糸を全部斬ればいいんでしょうけど……それも、本体から切り離した綱を吸収して回復しているみたいですし」


 ただ、その、えーと、巨大な……人型が2体、四足動物型が2体、多手多足型が3体、ウニみたいな球体から棘が点き出しているような形が1体の、モンスター詰め合わせとでもいうべきか。それに対して攻撃している間は、「縛り連ねる外法の綱禍」の本体から綱を切り離しても魔法陣にならない。

 恐らく、あの巨大な奴らの回復が優先されているんだろう。一応本体からも綱が切り離せているから、仮称盾分体と違ってダメージそのものは通っているようだし。ただし非常に大型の奴が8体もいるせいで、戦線維持が大変になっているようだが。

 これまでのパターンでいくと、たぶんあれは「縛り連ねる外法の綱禍」本体の体力が次の節目、恐らく体力バー(3段目)の残りが3割になるまで倒せないやつなんだろう。倒してもすぐ復活するというべきかもしれないが。

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