第2468話 72枚目:時短効果

 どうやら毒を積み込めば積み込むほどモンスターの出現総数が減る上に勝手に倒れるのが早くなる、という事で、私もちょっと一度クランハウスに下がった。何故かと言えば、そりゃまぁ、今の所、ルディルが持つスキル並みに強い毒は私が持っているからだな。

 ……そう。まだ解体できていないどころか、触れもしてないんだよ。あの、カバーさんの「百頭竜の剣」の再現試練で出てきた、多頭の蛇竜。あれの血と毒をカード化して、放り込むんだってさ。

 同情はしないが憐れまざるを得ない。何せ体感しているからな、あの毒性を。しかもそれを使う上にちゃんとルディルや双子の毒も使うし、他の研究系クランから提出された毒も使うんだって。


「酷い事になりますね……さっきまでとは違う意味で」

「まぁ散々こちらは苦労させられていますからね」


 なお触るだけで私の装備に修理が必要なダメージが入る相手をどうやって解体するかという問題は、私が一定範囲の温度を下げる魔法で一気に芯まで凍らせて、その状態でルミ達に解体してもらう事になった。凍っていたら毒性は発揮されないし、ルミ達元雪像組なら体温でとけて大惨事、って事も無い。

 まぁ血抜きは必要なので、胴体部分はぶつ切りにしてしっかり表面を雪でこする事で洗い、断面に触れないように注意して吊るして、その下に温度を下げる魔法を設置する。落ちてきた血は凍らせてから瓶に入れて、イベントページからカード化するようだ。

 毒腺はそんな手間は必要ないので、さくっと瓶詰めされていた。凍らせた状態で諸々強化した瓶に入れれば、一応瓶がとけるって事は無いようだ。


「……何で私の指先ぐらいの大きさの瓶で、元の星が3つもあるんですかねぇ」

「ははは」


 何で素材の癖にこんなハイランクなのかと……いうのはまぁ納得しかないけど。納得するしかないけど。マジで死ぬかと思ったもんな。というか、私が明確に体の一部を無くした(再生したが)ってあいつだけでは?

 まぁそう言う事で、かなり速やかに仮称盾分体は削り切られた。途中から戻って来たエルルが事情を聞いて、頭が痛そうにしていたがそれはともかく。

 ……若干こちらの気持ちのせいか、レイドボス「縛り連ねる外法の綱禍」本体が、こっちくんなという感じで綱をたくさん地面に突き立てていたが。それで止められるというか、手を緩める段階は、もうとっくに過ぎてるんだよな。


「あーあ、効果がありましたか」

「ピュィ」


 なおそうやって再び本体の綱を切る段階になった訳だが……どうやら「縛り連ねる外法の綱禍」、こちらが仮称盾分体を相手にしている間に、増やした体積の中で、大きな岩を設置していたみたいなんだよな。

 そして大きな岩があるのなら、同じ攻略法が、使えるな? って事で……さぁ食らえ、とばかりに、カード化された多種多様な毒とほぼ拘束具だろっていう装備が、大きな岩に叩き込まれた。

 性質的に拒む事も出来ないらしく、そこからは眺めているだけで全滅していったらしいよ。私は後方に控えて領域スキルを展開しているだけだから、掲示板の反応を見る限りは。


「というかこれはルディルでしょう。魔法的ウイルス、それもそれが原因で死んだらさらに毒性を増して周囲に伝播していくとか」


 いつの間にこんな凶悪な毒を作っていたのか。いや、ルディル自身が持つ状態異常スキルの方が凶悪なのは知っているんだけど。

 ……もしかしてだが、これ、毒が盛大に叩き込まれるのに乗じて、ルディル自身が現場に乗り込んで毒を撒いてたりしないか? それぐらいの状態になってるぞ。


「……。まぁ、ギミックに凝り過ぎてここまで追いつめる方が悪いですね」


 もうちょっと時間があったら、それこそ(経験値稼ぎの為に)動きが鈍くなる程度の毒や装備で済んだかもしれないのにな。運営のせいだぞ。

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