第2467話 72枚目:正当時短

 イベントページは沈黙している。それはレイドボス「均し富める模造の禍臼」の核だろう巨大な石臼から、結晶化した精霊を引き剥がして救助した時点から変わらない。

 だがアイテムをカード化する事は出来たし、突入する際のコストを軽減したり、カード化した時のコストを上げる効果はそのままだ。まぁイベントダンジョンに突入できない以上は何の役に立つんだって話なのかもしれないが。

 ただ、それだとおかしい筈なんだ。何故なら「カードケース」は前回イベントの報酬で出てきた今回のイベントの為の装備であり、新しい野良ダンジョンの形が増えたとかではないんだから。つまり使われるのは今回限りと言ってもよく、それなら、出番が無くなるのが早すぎる。


「いやまぁ、「均し富める模造の禍臼」に痛打を入れるのが早すぎたとかいう可能性はなくもありませんし、それこそ再現レイドボスとして戦う時まで取っておけという話かもしれませんが……」


 まぁそう言う可能性もあるにはあるがともかく。普通にイベント期間が終わるまではそのままというだけな可能性もあるにはあるが、とりあえず一旦横に置いておくとして。

 ここで私は司令部に、ある検証をお願いした。それは「カードケース」ならびにカード化アイテムの出番に関する違和感と、「均し富める模造の禍臼」のオリジナルの時の事を思い出しての違和感を、結びつけて考えたものだ。

 そんな暇はないと一蹴される可能性もあったが、流石司令部というか、或いは今までの「嫌な予感」の実績か。実行の難易度そのものは比較的高くないのもあって、戦力が集められて高速攻略されている仮称盾分体から一番遠い、真西から1つ北にある仮称盾分体で検証が行われたらしい。


「…………やっぱり……」

「ピュィ?」

「……どうしてこう、嫌な予感ばかりが当たるんでしょうね……。いえ、当たらないよりはよほどいいんですけど……」


 結果? その検証が行われた仮称盾分体が、主戦力が別の場所に集中しているのに、その3分の1の時間で削れきったって時点で分かる。大成功だよ。

 何のことかと言えば、まぁ、オリジナルでの削り方だな。「均し富める模造の魔臼」は、攻撃しても大変と防御力も耐性も高くて苦戦した。そして最終的に最適解とされたのは、増やしたところで無害な、奇跡による水を流し込む事でわざと増やさせて削る、という方法だ。

 そう。あの大きな岩が臼の一部もしくは増やされた欠片だというのなら、物を増やす事にこそリソースを使う筈だ。まぁ実際黒い綱そのものと、たぶん黒い綱の密度を上げる感じに増やす方向で効果を発揮していたんだし。


「アイテムを投げつけるだけでは、普通に攻撃判定になりますが……カード化したアイテムを投げつけると、そこからしばらく、召喚されるモンスターにそのアイテムの効果が反映されて出現し、出現数が減るとか……」


 ちなみに効果が反映するのはプラスもマイナスも問わないようで、最終的に司令部は超重量の足装備と、どこで手に入れたってレベルの強毒をカード化して投げつけたらしい。モンスター? 身動きできないまま折り重なった状態で毒によって倒れたってさ。早い筈だよ。

 まぁどこで手に入れたっていうか、少なくともルディルはかかわってるだろうからな、毒に関しては……。しかもちゃんとランクは高いから、モンスターの出現数がごっそり減ったらしいし……。


「こちらがあちらに突入する場合にコストを支払わなければならないのなら、あちらがこちらに出向く際にも払うものを払ってもらいましょうと、そういう感じでしょうか」


 本体に通じるかは分からないというか、本体の場合、大きな岩に相当する石臼が通常空間からだと見えないからな。たぶんちゃんと叩かないといけないと思うんだが。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る