第2465話 72枚目:厄介タッグ

 伸びた枝から新たな葉が出るように、或いは地下茎が伸びた先で同じ花が咲くように、中央のレイドボス「縛り連ねる外法の綱禍」から伸びた大量の綱が8つに分かれた先は地面に刺さると、その場で骨組みのドームのようなものを構築した。

 中央の本体と違うのは、それぞれの中心に黒い綱でぐるぐる巻きにされた巨大な何かが据えられているという事だろうか。私の見間違いじゃなければ、あれが巨大な岩であり、「均し富める模造の禍臼」の一部、もしくは「縛り連ねる外法の綱禍」によるコピーか追加のリソースなんだろう。

 問題はその効果だ。どうやら観測班は8つの束に分かれた綱の束の中にあるのが大岩だとしっかり確認できていたようで、召喚者プレイヤーにもその情報は共有されたし、しっかり警戒した状態で攻撃が再開された。


「……まぁ、周りのがあったら中央に攻撃が通らないのは大体分かっていましたが」


 攻撃が通るルールとしては先ほどまでと同じ、ただしそれが通じるのは8つの束に分かれて増えた新しい骨組みのドームのようなものだけであり、その大元となる中央の綱には一切の攻撃が通らなかった。

 形というか配置的にそうだろうなという予測があったらしく、モンスターの群れをかき分けて突撃した割に、撤退はあっさりしていた。オリジナルの事を考えても、連想は難しくなかっただろうしな。

 だからまず周囲の分を全滅させる、と、中央からも出現してやってくるモンスターの群れを撃破し続けながら、綱を切っていったんだが。


「やっぱり、そういう効果があったんですね。一応、岩そのものには攻撃が通じる事と、落ちた岩は普通にモンスターを召喚するだけっていうのは助かりますが」


 その、切った綱が魔法陣になって消えるまで。その間に出現するモンスターの数が、明らかに多かったらしいんだよな。つまり、モンスター召喚の効率が、大幅に上がっている。モンスターが増えている事を確認したのは観測班なので、まず間違っていないだろう。あの混戦の中で良く分かったな、とは思うけど。

 だがまぁそういう事なので、召喚者プレイヤー側は綱を切ってモンスターの群れを倒しながら、可能な限り中心の大きな岩に攻撃をしている。あの岩が減れば、モンスターの増え方も下がる筈だからな。たぶん。

 それに明らかにあの大きな岩を中心にして骨組みだけのドームみたいなものが構築されているから、岩が無くなればその時点でドームの形を保てなくなるのでは、みたいな予想もあるようだ。


「まぁ、明らかにあの岩が中心で柱みたいな形になってますし、中央の本体からはすでに切り離されていますし……」


 なお、切り離されているからどれだけ削っても本体にダメージは通らない。まぁ実質盾みたいなものだから仕方ないのかもしれないが。元々の体力が高いのに盾を追加するな、というのは掲示板で散々叫ばれているので省略する。

 私として不満なのは、名前が分かって以降は共通なのか、周囲に分かれた分も領域スキルを吸収するって事だ。しかも黒い綱が太くなるだけならまだしも、中心の岩が盛り上がっていったという検証結果がある。

 お陰で最前線はとても賑やか()にもかかわらず、私は工事現場と戦闘エリアの中間でお散歩である。いやまぁ確かに、掲示板を見られるだけマシではあるんだけど。


「工事が進んで土地を取り返していければ、領域スキルが通るようになればいいですねぇ」

「ピューィ」


 領域スキルが食われもとい吸収されなくなれば、全力で範囲も強度もあげた状態で展開するだけでモンスターが勝手に自滅していくんだけどな。特定範囲に入るだけでダメージが積み込まれる効果は、こういうとにかく数がいる時にこそ輝くんだし。

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