第2463話 72枚目:苦戦中

 土曜日の夜、という大変召喚者プレイヤーの稼働率が高いタイミングで、通常空間におけるモンスターの群れの迎撃。2体分のレイドボスを一度に相手する上に、そのオリジナルはリソースと耐久度に優れていた。ギミックにも優れて(?)いたが今はさておく。

 なおかつイベント期間も明日の日曜日で終わりとなれば、出し惜しみせずに全力を突っ込んでしまってかまわない場面だ。出し惜しみしてたら間に合わないとも言うが。

 だから現在の火力が召喚者プレイヤー陣営としてはほぼ最大な筈で、通常のモンスターの群れ程度ならいくらいたところで薙ぎ払われて終わり、の、筈なのだが。


「文字通り桁外れな量が湧いていればそうもいかない、と。まぁそうですよね。時間当たり数万体倒すことができても、同じ時間で同じだけ出現していれば全体としての状況は変わりませんし」


 という事で私も前に出て、領域スキルの範囲と供給能力はそのまま、モンスター及びその奥のレイドボスに領域スキルの効果を押し付ける事になったんだが。


「領域スキルが通じないとか反射されるとかならともかく、吸収してきますかー……」


 なので、私は再び後方に戻ってお散歩である。あぁ大丈夫、大惨事にはなってない。何故なら前に出ようと動いたタイミングでだいぶ手前に綱が刺さって、その領域スキルの中に入った1本が私のリソースと引き換えにみるみる太くなっていた、っていう事から判明した事だからな。

 もちろんその太くなった綱はもう切られている。そして他の領域スキル持ちの人にも司令部が検証をお願いしたところ、領域スキルの設定や条件に関わらず、問答無用で吸収される、という事が確定した。

 また、領域スキルがそんな状態だったからと司令部(検証班)は綱の挙動を再検証。その時に分かったのが、だな。


「魔法物理共にある程度の割合を吸収、特に精霊によるものは7割から8割方吸収されている。神の力は吸収されないが乱反射されて周辺被害多数、綱から召喚されたモンスターすら投げ飛ばしてぶつけると吸収するとか……」


 こう、順当に影響が強くなってるな、って感じだろうか。吸収するというか、喰われるって言うべきだろうし。もちろんモンスターを吸収させた場合、吸収させたモンスター以上のモンスターが出現する。

 なお綱の大量出現が始まった段階で、イベントダンジョンに挑む事は出来なくなったらしい。正確には、イベントダンジョンそのものが無くなった。いくらカードを用意しても、挑むべき空間が無いのではどうにもならない。

 まぁ、イベントダンジョンはどちらかというと「均し富める模造の禍臼」の方だっただろうからな。その最奥まで行って相当暴れた上に、結晶化した精霊を救助してきたんだから、そんな余裕はないだろう。


「それでも、その本体はまだ亜空間の中にいるようですけど」


 何せ黒い綱が空間の罅割れに吸い込まれているからな。それも黒い綱が近くを通過したら、掃除機みたいになるらしい。結構な吸引力なようだ。観測班曰くだが。

 ただ同じく観測班によれば、黒い綱を吸い込む量に応じて罅割れは小さくなっていっているようだ。流石に今見えている空間の罅割れがイコールで「均し富める模造の禍臼」の体力って事はないだろうが、オリジナルだって物を増やすと体力が減ってたからな。削れてはいるんだろう。

 ……が。


「このまま片方だけの体力が削れた場合、どこかで完全に融合するような気がするんですよね」


 という嫌な予感は司令部はもちろんベテラン勢もしているだろうから、今頑張って「縛り連ねる外法の綱禍」のリソースにして体力である黒い綱を減らしてるんだけどな。

 ……削るペース、間に合ってると良いな。もちろん「均し富める模造の禍臼」が増やす分以上に削らないと、実質回復してるまであるんだけど。

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