第2436話 72枚目:内部合流

 さて大部屋を燃やしながら小走りというかジョギングのペースで移動し続けて、今でログイン時間が2時間ぐらい経過しただろうか。


「ん?」


 大部屋を燃やしてモンスターが出てくる穴を焼きつぶして、壁が崩れたらそこから出てくるモンスターと崩れた分の瓦礫を燃やして、と、悪人面のイケおじの火力にしみじみと感謝しながら調子よく進んでいたんだが、ちょっと今壁の崩れ方がおかしかった気がする。

 具体的には、向こうからも炎が上がったような。……まさか?


「あれ? 燃えてる?」

「燃えてんな」

「あ! ちぃ姫! ちぃ姫ー!」

「なんやてちぃ姫!?」

「ほんとだヤッター! “細き目の父にして祖”の神に感謝!!」


 と思ったら、案の定召喚者プレイヤーのパーティが壁の向こうにいた。しかもテンションの高さと私が見覚えがある事から、『可愛いは正義』の人達だ。そしてティフォン様に感謝をしてるって事は……あ、やっぱり。かなり豪華な感じの松明を掲げてる。

 全員が徒人族なので、そういう突入条件のあるイベントダンジョンに入ったんだろう。私も合流できてうれしい。それ以上にテンションの上がり方が激しいけど。落ち着け?

 で、合流したところで私がいた方の大部屋で、別の壁が崩れたので、そちらにまとまって移動していく。そのまま話を聞いてみたんだ。主に今掲げてる、かなり豪華な感じの松明とかについて。


「……あー……なるほど……。信仰が集まると、そう言う事も出来るようになるんですね……」

「まぁあの森燃やした時も司令部からの捧げものとお願いだったし」

「その前の温泉直送もあの神様の協力ありきだったし」

「結構ノリが良いよね竜族の神様」

「地母神系の神様はお祭り大好きっていうのは定番」


 何のことかって言うと、最後の大陸に新しく聖地が出来たじゃないか。今話に出た通り、温泉直送からのギミック不全とか、無限回復状態になってて攻略に遅れが出た森を焼き払ったりとかしている分だけ、捧げものと信仰が集まっていたんだ。主に召喚者プレイヤーからの。

 そういう下積みというか実績というか前例というか、そういうのがあったという前提の上で、司令部はこう、所謂火種だな。ティフォン様及びエキドナ様の奇跡を願いやすくなる、神の力を宿したアイテムについて提案したんだそうだ。

 それが、あの火山の黒い石を元に、赤い光が零れ出る程の熱を秘めているが触っても火傷しない石と、しっとり湿っているが触っても濡れない石らしい。そして今回、赤い光が零れる方の石を使って、これもしっかりと神の加護を受けた素材で作った松明に着火したんだそうだ。


「まぁでもこれぐらいしなきゃどうにもならない難易度用意する方が悪いよね」

「そうそう。そもそも世界観的に、もっと神に頼るっていう前提があったとしか思えないからセーフセーフ」

「ちゃんと感謝しながら追加で祈りと捧げものしてるから、神様自身は間違いなく喜んでるし」

「それはそうですね。きっと良い笑顔でゴーサイン出してくれてます」

「ちぃ姫が言うんなら間違いないな」

「これからも盛大にレイドボスを燃やそうぜ」

「燃やせるほうが悪いんだし、燃やさなきゃどうにもならない状況にする方が悪いんだよなぁ」


 なお、こういう話をしている間も軽いジョギングぐらいのペースで移動は続けているし、大部屋ごとモンスターは燃えている。

 しかし灯りの奇跡の炎の数自体が増えたからか、大部屋を移動する時の魔力消費がだいぶマシになったな。最大値の4割ぐらいか? 半減とはいかないが、十分な軽減だ。

 ……まぁ、灯りの炎が増えれば順当に照らせる範囲が増える。たぶんそういう感じで出力そのものが上がっているんだろう。大部屋が完全に焼けて壁が崩れるまでの時間が短くなっている気もするし。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る