第2435話 72枚目:探索続行

 レイドボスのギミックフラグうっかり破壊事件はともかく、突破した大部屋の数が10を越えた辺りで、灯りの奇跡を維持して大部屋を移動する為に必要な魔力は最大値の6割で止まった。

 いやまぁ十分多いんだけどね。多いんだが、何とかなる量だ。これで実質無限に大部屋が攻略できることになる。前の大部屋に戻る事が出来ないし、奇跡の炎は大部屋全体を焼いているから、レイドボスが空間を回収して再利用する事も出来ない筈だ。

 それに空間の穴へ吸い込まれた時の事を考えれば、打ち止めになったら脱出できるだろうしな。他にも大部屋を移動できている人がいるかどうかは分からないが、私は移動できるのだから、どこかに合流できるかもしれない。


「まぁ出来なくても、残り時間がありませんからね。名前を確認できてからが本番、という部分がある以上、そこまではどうにか辿り着きたいところです」


 何せ、イベント期間は残り数日だからな。次の土日で終わりだ。そしてそこからリアル10日ほどすれば、最終決戦である。

 何というか、いよいよここまで来たんだなぁという感慨よりも、ようやくここまでこぎつけた、って感じの方が強いが、まぁそれはともかく。どこかで召喚者プレイヤー側が敗北する前提だった場合、メインストーリーを最短で走り切ってしまった事になるが、それもともかく。

 むしろメインストーリーが終わってからこそが本番の気配もあるから、最短クリアそのものは良いとして。今目の前の問題だ。


「マップ自体が別になってしまうと、オートマップへのメモという形でも連絡が取れなくなりますからね……本当に色々考える事で」


 なお灯りの奇跡を願えて維持している現在でも、オートマップ以外の召喚者特典大神の加護は封じられている。だから、外の状況が全く分からないんだよな。

 内部でこれだけ盛大に燃やしている以上、外にも何かしら影響が出ている筈だ。というか、これだけやっていて何の影響も出ていないって事はないだろう。むしろ何も起こってない方がおかしい。

 まぁでも、綱の間を繋いで壁になるような形になった空間の罅割れ。あれ1つがイベントダンジョンに換算するといくつ分かも分からないし、壁1枚につき大きさにもよるが最低100個分からとかだとまだまだ攻略数が足りない事になる。


「それに、私は移動できるようになったとはいえ、全力で遠回りさせられているでしょうし」


 それもたぶん間違いない。奥に進むのが正規ルートだとするなら、外周をぐるぐる回らせられているだろう。空間的な繋がりは分からないけど、こんな火力を振りかざした状態で進もうとするんだから、それはもう本気で妨害してくる筈だ。

 まぁその妨害、空間への閉じ込めをゴリ押しで突破しているからな。外周をぐるぐる回る事で少しでも中央へ到着するまでの時間を稼ぐしかないとも言う。それでもリソースの消費は多大な事になるだろうけど。

 ただまぁ、それならそれでいいんだ。何故なら外側からリソースである空間を削ってるって事になるからな。相手の空間的な厚みが減れば、それこそ今の私において奇跡の維持に必要な魔力が減っていくように、内部にこちらの神々の力も通りやすくなるだろう。


「そうすれば外と連絡が取れるようになるかもしれませんしね。……ちょっと小走りぐらいにはペースを上げますか」


 別に今更1人で行動するのはつまらないとか言うつもりはないが、大人数でわいわい出来るならそっちの方がいいのも確か。周りに誰もいなくても、せめて掲示板を眺めてわちゃわちゃしている情報を仕入れるぐらいはしたい。

 それに、まぁ、レイド戦なのに隔離されるのはちょっと遺憾だなぁと。そう思う部分もあるし。周りに敵も味方も大勢いてこそ真価を発揮する装備と種族特性とスキル構成だしな、私。

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