第2434話 72枚目:突入先仕様
さて、じわじわと燃えて行った天井だが、しばらくすると派手に崩落する事で炎が消えた。瓦礫はちゃんと燃えたんだけどな。
ただどうしてそういう風に燃やされたのかは理解したのか、その崩落跡は穴になっていて、そこから大量のモンスターが降って来た。まぁ、大部屋に入った瞬間に最初の1体が燃えて、そこから奥へあっという間に火が走っていったんだけど。
ただその奥で燃える音が続いているようだっていうのに気付いて、空気の足場を蹴ってその穴の奥を覗いてみたんだが……どうやら階段になっているらしい。
「いや、天井に階段を設置されましても……」
やっぱり、レイドボス的には私をあの大部屋に閉じ込めておくつもりだったんだろうな。大神の加護とかの関係で無理があったんだろうけど。
それはともかくせっかく進める道が出来たのだからと階段を上っていくと、そこにもモンスターでいっぱいの大部屋があった。大きな扉をくぐった時同様、大部屋に踏み込んだ瞬間にごそっと魔力を持っていかれたが、灯りの奇跡は維持できたので良し。
で、今度はモンスターの出現する穴まで含めて燃やし尽くされると、大部屋の壁の一部が崩れて穴が開いた。その向こうからは大量のモンスターが飛び出してくる。
「流石に学習しましたか。まぁ進めるなら大人しく進みますし、モンスターだけの方がまだリソース消費的にはマシなのかもしれませんが」
という訳で、再びモンスターの群れを大部屋ごと燃やしながらのお散歩だ。もちろん領域スキルはしっかり維持しているし、もし万が一奇跡の炎を耐えて突っ込んでくるモンスターがいたら迎撃できるように構えてはいるけど。
ただ今度は、次の大部屋に踏み込まないとモンスターの大元が燃やせない上に、だんだんと奇跡の維持コストである魔力が増えていくらしい。持っていかれる魔力が増えているし、大部屋に踏み込む時に灯りの奇跡の炎が揺れるから。
まぁそれはそうだな。全力で阻止しようとするのもあるだろうし、奥に踏み込めば踏み込むほど奇跡が通りにくくなるのは分かっている事だ。
「まぁ正直、どこかで立ち止まって延々とモンスターを焼いているだけでもそれなりにリソースを削る事になるとも思いますが……」
ただ魔力の消費が増えると言っても一時的なものだし、大部屋が焼かれている間に全回復する程度だ。そして、魔力が最大値から空になる程の消費量にはならないだろう。私のリソースの最大値がどれだけだと思っているんだ。
実際、最初が体感3割ぐらいで、大部屋1つにつき増えていくのが5%ぐらい。その増え方も相手が追い詰められているからか、進むほどに緩やかになっていく。たぶん、最大値の6割ぐらいで止まるんじゃないかな。
そして、6割持っていかれたとしてもしばらくすれば全回復するし、4割あったら普通に戦える。魔法じゃなくても、旗槍かレイピアで戦えばいいんだしな。ちゃんと訓練はしてるから。
「しかし、特定の場所を調べる事で突入するという仕様の上に突入条件が決まっているとなると、単体でクリアすると脱出する形かと思いましたが……連続でクリアできるんですね」
ちょっと不思議だったが、まぁそういう事もあるだろう。たぶん。
……連続クリアできる仕様じゃなかったような気がしなくもないというか、そもそも移動できるような構造じゃなかったような気はするんだけどな。この、明らかに急造な壁の穴とか天井の階段とかを見ると。
でも表示はイベントダンジョンだったし、実質私を名指ししている突入条件だったしなぁ。あの綱と罅割れの数からして、数の力で攻略するタイプだろうし。
「……まさか、突入したメンバーが耐えている間に通常空間で本体を叩く、とかいう仕様だった……?」
なおかつそういう仕様を、うっかり、思わずレイドボスが空間ごと隔離する勢いで焼いた上に無理矢理お代わりを引きずり出している……?
……。
…………。
「まぁやってしまったものは仕方ありませんし相手のリソースが効率よく削れるのは良い事です。仕様の違いが細かすぎて紛らわしい出し方をする方が悪い!」
そういう事なので、気にしない! 以上!
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