第2433話 72枚目:変化後突入

 という事で早速、実質私しか突入できないイベントダンジョンへ向かった訳だが。


「まぁ大部屋なのはいいですし松明のカードが消費されてるのも想定内ですが」


 ふう、と息を吐いて周りを見回すが、うん。控えめに言って大惨事だな。主にモンスターにとって。

 強さが上がっているのも想定内だし、どうも領域スキルの効果が出てないっぽいモンスターが紛れ込んでいたのもまぁいい。大部屋は大部屋のままで、ダンジョンらしい石造りなのも見慣れたものだ。

 なんだが、ちょっと数が多かったんだよな。まさか床一面を埋め尽くすだけじゃ足りずに、天井にまで張り付いてるとは思わないじゃないか。しかも壁や天井の一部に穴が開いて、そこからわらわらと出てくるのが見えているし。


「……何というかこう、大歓迎ですね?」


 なので、まぁ。そのモンスターが大体全部、こう、普通の奴だって言うのもあってだな。

 【調律領域】の、吸収能力を開放してみたんだ。

 後はわらわら湧いて来るモンスターがバタバタ倒れていく中、領域スキルが効かないっぽいモンスターを倒すだけだ。大変楽でいい。……のはいいんだが。無限湧きなのか何かギミックがあるのか、モンスターの出現が止まらないんだよな。

 どうやら天井、壁、そして床の数か所に穴が開いていて、そこからモンスターが降って来たり這い出して来たりするようなんだが、どうしたものかこれ。


「まぁ実質私を指名しているんですから、これぐらいは用意しているでしょうけど」


 まぁでも、それならそれだ。と、【調律領域】はそのまま、モンスターから吸い上げて溢れているリソースを領域スキルにそのままつぎ込んで目一杯出力を上げたところで、灯りの奇跡を願う。

 何か若干空間が軋む音がしたような気もするが、竜族相手に小細工が必要なステージを用意する方が悪いんだよなぁ。モンスターが無限湧きなら無限湧きで、もっと分かりやすい突破方法を用意してくれないと。

 領域スキルの出力が十分高かったからか、今度はいつも通りの大きさで、灯りの奇跡の炎が点いた。途端。


「まぁそうなりますよねー」


 領域スキルはこちらの力場だ。つまり奇跡の効果も通りやすい。という事で、まだ残っていたモンスターごと、大部屋が一度燃え上がった。

 こうなったら吸収も何も無いので、【調律領域】の吸収能力を切る。しかしまぁ派手に燃えて……あれ? もしかしてあのモンスターが出てくる穴って前の空間の穴から突入した時にもあったのか? それがあの不自然な燃え方の正体?

 なるほど流石ティフォン様。と思っている間に、モンスターが出現していた穴はその奥まで燃えたらしく、奥から壁がせり出してくるような形で塞がった。無限湧きに見えたが、やはりある程度リソースの限界はあったらしい。


「……もしくは、本気も本気で残りリソースを一掃されそうになったから、慌てて切り離したって可能性もあるかも知れませんが」


 みたいな事を思っている間に、残っていたモンスターも一旦全て焼き払われたのか、見た目は炎が収まった。とりあえず旗槍の穂先に移した炎は残っているのを確認して、大部屋の中を見回す。

 モンスターが出てくる場所ごと焼き払ったからか、モンスターの追加も無い。かといって魔法陣が出てくる気配もなければ大きな扉が出てくる様子もない。うん? 閉じ込められたか?

 はて、と首を傾げてみたが、耳を澄ませても何も聞こえないし部屋に変化は現れない。……ふむ? と思って風の足場を設置して天井近くまで移動し、灯りの奇跡の炎を天井に近づけてみた。


「あっ、やっぱりここは更に相手の領域の奥になるんですね」


 そうしてみたら、やっぱり不自然な封鎖だったのか、天井を構成している石の隙間から火が回っていきだした。

 一回火がついたら、空間自体が敵である以上はそうそう消えないだろう。というか、普通の水をかけた程度じゃ消えないのは知っている。私はしっかり領域スキルを維持しながら、他の動きが無いか注意しておくか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る