第2437話 72枚目:一時脱出

 その後もぽつぽつと、同じく灯りの奇跡の炎を掲げたパーティと合流しつつ進む事1時間ほど。流石に全員がティフォン様の奇跡を願った訳では無く、他の神の奇跡による炎も混ざっているが、「敵を滅ぼす」特性付きの炎という共通点があるからか、問題なく相乗効果は発揮されるようだ。

 わいわいと賑やかに大勢で移動していくので、非常に和やかなピクニック状態だ。BGMがモンスターの悲鳴と大部屋が大火力で燃える音だが。召喚者プレイヤーはともかく、住民の仲間も最前線慣れしているので大丈夫なようだ。

 という事でひたすら進んでいたし、まさかここにきて「脱出用魔法陣」で外に放り出される事はないだろう。


「――と、思っていたんですがこれはまさか」

「どう見ても放り出しにかかってる件」

「明らかにあの魔法陣よな?」

「燃やす奴はお外へぽいってか」

「だからこうでもしなきゃクリア出来ないようにするなと」


 ……誰かがカウントしていたらしい大部屋の数で、ちょうど100を数えた時に、壁が崩れる代わりに光り輝く魔法陣が出現するまでは。

 一応その場にいた【鑑定】持ち全員でそれぞれ調べてみたが、やはりこれは「脱出用魔法陣」でいいようだ。ちょっと待てやレイドボス。


「しかし文句を言っても何も変わらんわけで」

「この部屋もこれ以上燃やせないっぽいし」

「全員が乗らないと動かないのも確定」

「はよ出てけって思われてるのは気のせい?」

「実際思ってんじゃない?」

「まぁ出てる被害考えりゃそれはそうか」

「大体難易度が悪いんやけどな」


 とはいえ、これ以上進めないのは間違いないし、なんなら部屋がちゃんと燃え尽きているので戻る事も出来ない。壁や天井に灯りの奇跡の炎を近づけてみたが燃えなかったので、大人しく撤退するしかないようだ。とても残念だけど。

 という事で、しぶしぶ全員で集まって「脱出用魔法陣」に乗る。最後の1人が足を踏み入れた瞬間、ガッ! と強く魔法陣が光って……次に見えたのは、ドームの骨組みみたいな形になっている、推定レイドボスだった。

 周りを見ると、内部で合流したメンバーは全員いる。同じ場所に放り出されたようだ。


「あの魔法陣、「脱出用」ではなく「追放用」に名称を改めた方がいいのでは?」

「ド直球~」

「まぁでも大体合ってる」

「こっちは倒すまで焼いてもいいもんな」

「あっ司令部気付いた」

「まず報告ね」


 空間を出入りする都合なのか、灯りの奇跡の炎は消えていたが、これは知っていたのでスルー。司令部の人が気付いてこっちに来てくれたので、何があったのかを説明していく。

 その途中で改めてレイドボス本体らしいドームの骨組みのようなものを見ると、一度上に伸びあがってから地面に突き立ちドーム型になっている黒い綱は、外側に行くほど細くなっているようだ。一番外側なんか、ほぼ糸だろう。

 またその間を繋いで壁のように塞いでいた空間の罅割れも、外側にはほぼ残っていない。罅割れの方だけで言えば、残っている半径は3分の2を切っているんじゃないだろうか。


「突入報告ありがとうございます。現状突入した後で戻ってこられたのは皆様のみという事で、他の方は内部での戦闘が続いていると予想されます。しかし黒い綱部分は残っていてもモンスターを召喚するのみである事、空間の罅割れが無くなれば奥へ進める事から、再び突入可能な条件のイベントダンジョンが見つかった場合、突入をお願いします」

「せやな」

「それはそう」

「めっちゃ進んだからな」

「引き続き燃やすかー」

「こんだけ効果あったらやるわな」


 とか観察している間に、司令部の人は司令部へ私達の報告を共有して、折り返しの指示を貰っていたようだ。つまりさっきまでと一緒って事だな。

 それなりに時間はかかったが、まぁでも、同じくらいのペースだとすれば、あと3回ぐらいはいけるだろうか? 奇跡の炎を使っていない召喚者プレイヤーや住民の仲間は戻ってない、っていうのも心配だし、ガンガン燃やしていこう。

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