第2397話 71枚目:厄介要素

 さてそこから土曜日一杯を異界強度難易度10台のイベントダンジョンに挑戦し続けたが、流石に今までと同じ人数では探索ペースが落ちていた。主に広さのせいで。私はニーアさんに空気による全体探索をお願いして、最短ルートで攻略出来てたけど。

 なので、大体の召喚者プレイヤー上位勢はもう少し上の異界強度難易度に人数を増やして挑み、馬(相当の生き物)の解禁を優先したようだ。解禁というか、他のコストを下げてメンバーに入れられるようにするというか。

 ……馬(相当の生き物)にも「カードケース」は渡せるし、割り勘機能をつければ問題ない筈なんだがな? もしかして「カードケース」の確保数が足りなかったか?


「……あー」

「どうした、お嬢」

「いえ。私達は全く問題ないんですが、一応皆にも伝えておこうと思いまして」

「どうされましたか末姫様?」

「今回の相手の空間内で出てくるモンスターの一部は、どうやら「カードケース」を狙って攻撃してくるらしいんです」

「何?」

「そうでしたか?」


 そうらしいんだ。で、「カードケース」そのものの耐久度はそこまででもない。強化してもそこは大して変わらないっていうのは知っている。それに、ベルトとかで身に着けておかないと……装備しておかないと突入出来ないんだよな。

 で。イベントダンジョン内に出てくるモンスターは普通に襲ってくるんだが、中に時々、明らかに「カードケース」を狙って攻撃してくるやつがいるらしいんだ。だから予備も含めて集める必要があって、それで数が足りてないようだ。

 ニーアさんは首を傾げているが、私達はほら、ニーアさんの超広域探知でマップも敵の位置も全部把握したうえで、エルルが出合い頭に全滅させてきたから。そもそも、まともな戦闘になってない。


「強化した「カードケース」が壊されると、また強化できるところまで集め直しですからね。かといってインベントリに入れると機能不全を起こしますし」

「なるほど、やけに手に入ると思ったら壊れる前提だったのか」

「でも壊されない方がいいんですよね?」

「それはそうです」


 エルルの納得に続いたニーアさんの素朴な疑問には肯定を返す。それはそう。壊されない方がいいに決まってる。そもそも被弾しない方がいいのも間違いないんだし。


「まぁでも、一応は全体連絡をしておきましょう。一応予備もあるというか余った分はありますけど、絶対に攻撃を食らう訳がない、っていう慢心は良くありませんし」

「なるほど! それはそうですね!」

「乱戦とか大規模戦闘になるとまた勝手も違うしなぁ……」

「なるんですか!?」

「たぶんな」

「まぁ、まずなりますよね。大規模戦闘に」


 何せレイド戦なので。大人数での非常に大規模な戦闘こそが華だ。今までも最終的に全部そうなってたし、そこは変わらないだろうというか、それこそがレイドボスとの戦闘ってやつだし。

 そもそも現時点ですら、探索する範囲が広がり続けているから、一度に突入する人数を増やさないとどうにもならなくなっている。というか、だから馬(相当の生き物)と一緒に突入できるようにしないと、移動に時間がかかってしょうがなくなってるんだし。

 順調に突入コストが下がってきているが、このままいけるかどうかはまだ分からないしな。突入コストが下がり切った先でなら実質何の制限も無くなる、というのは、オリジナルの事を考えるとまずあり得ないだろうし。


「もっとも、今回の相手の片方は、最後の最後まで合流が出来なかったやつですからね。どこまで一緒に行動できるかは、ちょっと疑問なところがあるんですけど」

「……。あー、あれか。あれだったな」

「最後の最後……あ! あの臼ですか! そう言われればそうでした!」


 たぶん、というかまず間違いなく、召喚者プレイヤーと住民で突入制限がかかるイベントダンジョンは出てくると思うんだよな。2体同時出現の片方、そのオリジナルである「均し富める模造の魔臼」の事を考えると。

 ……もう片方のオリジナルである「縛り連ねる外法の綱核」も、分断やステージ分けは相当なものだったから、分断や突入制限をかけない訳がないんだよなぁ。

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