第2398話 71枚目:攻略順調

 若干「カードケース」の再調達という躓きはあったようだが、それでもまぁ既に期間が半分、というか、ここまでのペースだと既に時間切れ、っていう危機感から、召喚者プレイヤーの稼働率も高ければ士気も高い。

 という訳で、6月最後の日で日曜日になり、異界強度難易度が10台のイベントダンジョンは全部攻略された。そのタイミングでも再度警戒状態になったが、やはりそこまでの太さの綱が勝手に切れただけで、特に何も変化は起こらなかったが。


「これ、もう放っておいても大丈夫なんじゃない?」

「と思っていたら絶対足を掬われるので、気を付けておきましょう」


 みたいなサーニャとそれに対する返答もあったが、ともかく。

 理由は色々だがイベントダンジョンそのものはクリアされ続けている。という事は報酬が積み上がるという事であり、突入コストが順調に下がっている、という事だ。

 突入コストが下がれば、大人数で行動するのは当然、突入の為に用意するカード化用のアイテムも少なくて済む。「カードケース」の割り勘機能が使えるようになれば、【絆】や【契約】で一緒に行動している仲間の分のコストも払いやすい。


「というか、普通に装備一式を3セットは経済的に厳しいんですよね」

「かなり使ったが、本当に良かったのか?」

「……私も参加して、素材の基礎になる布地や鉄板を作って売ったので、収支は黒字です」

「…………」


 驚いたことに、何故か現金資産が増えてるんだよなぁ……不思議だなぁ……。

 ちなみにこれは装備一式に関する収支であり、ポーションに関する収支と投げナイフ系のアイテムに関する収支は別である。……ポーションに関しては、あれほど希釈液を大量購入した上に希釈作業とビン詰め作業を「第四候補」に丸投げもとい外注したにも関わらず、黒字になっているが。

 カバーさんにどれくらい現金資産減りました? って聞いて、黒字です、って言われてしばらく理解できなかったからな。おかしいな。そこは普通流石に現金資産が何割か減りましたってところじゃないのか。


「そもそもポーションと料理に関してはこちらで用意出来る物でしたし、今はその辺の消耗を考えている場合ではありません。少なくとも特級戦力である私達が手を止める訳にはいかないので」

「……なぁお嬢」

「なんでしょう」

「もしかしてだが、備品とか設備とかがごっそり最新版になってたのってそういう臨時収入があったからか?」

「…………私だってこのタイミングで現金資産が増えるとは思ってなかったんですよ」


 本当に思ってなかったんだよ。だからつい使えるところにお金を突っ込んでしまったんだよ。今この時期に大量の現金を抱え持っておけるだけの度胸は私にはない。

 と、ともあれ、攻略ペース自体は順調に加速している。大分種族に関する突入コスト減少報酬は出揃ってきた筈だ。装備に関する項目も、メジャーどころは大体出てきただろう。

 まだちょっとマイナーな装備が出ていないようだが、やはり報酬の傾向として、クリアした召喚者プレイヤーや住民の種族や装備が優先して出てくるというものがあったらしく、多少偏るのは仕方ない。


「この調子のままなら、さほど間もなく大人数で突入できるようになる筈です。問題はそこから先ですし、今の調子で減り続けていても、目に見える体積を削り切るにはまだまだかかりそうですが」

「まだあるのはほぼ確定なんだな……」

「分断しない訳がありませんからね。オリジナルの事を考えても。それにこの報酬だって、種族や武器種別で突入コストが変わるという事は、そこを基準に条件を付け足すことも可能って事でしょうし」


 そう考えると、本当に最初の1週間のロスが痛いんだよな。まだ何とか巻き返せるうちだといいんだけど。

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