第2389話 71枚目:本格攻略

 どうやら今回突入できる空間に時間制限は無いらしく、しっかりじっくり探索して、最初のクリア者が出たのは次の日の昼頃だったようだ。

 もちろん私は大学に行っていたんだが、どうやら『アナンシの壺』がまとめ情報を出したらしく、その辺りから大学がざわついていた。フリアドプレイヤーほんと増えたな。

 まぁ私もいつも通りに帰って、いつも以上に素早くログインして情報を確認するんだけど。どうなったんだ?


「……なるほど、そういう」


 ダンジョンで問題なく、最奥にいたボスモンスターを倒してクリアになった時の報酬は、イベントページに表示されるようだ。そしてそこには、あれから更にクリア者が出たのだろう。複数の項目が追加されていた。

 それらは上から順に「種族:徒人族の突入コスト-0.1」「種別:短剣の突入コスト-0.1」「種別:薬の消費コスト+0.1」となっている。突入コストは文字のままだが、消費コストっていうのは、カードとして消費する時のコスト、つまり、カード化した時の星の数が増えるって事らしい。

 別になってるって事は、消費コストが増えても突入コストはそのままなんだろう。まぁそうでないとバランスが大変か。そうだな。


「しかし、人族ではなく徒人族、剣ではなく短剣って辺り、どれだけクリアしなければならないのかだいぶ頭が痛いですね」


 それも0.1刻み、小数点以下は、突入コストは切り上げ、消費コストは切り下げになるらしく、効果が出るのは同じ項目でのクリアが10回に届いてからだ。

 なおかつ司令部更新の全体連絡スレッドによれば、この報酬である制限緩和の項目はランダムだとの事。厄介だな。本当に。

 ある程度効果が出始めたら、どんどん加速していくのは見えている。見えているが、これはきっついな。私自身はほぼ何も出来ないって言うのが更にきつい。


「かといって、素材や身内用の薬や料理を出して騒がれるのも困りますし……」


 とりあえず、まだしばらくはポーション作りを続けるとしよう。イベント期間は2ヵ月にまたがって6週間あるのだし、何より、その後に大本命が待ってるからな。いくらあっても足りないのは見えている。

 という事で、私はひたすらポーションと、途中からはお札も作ったし神の力が込められたアイテムも作って共有倉庫に放り込み続けた。うちの子には、後で絶対忙しくなるから今のうちに休んでおいてと伝えておいた。

 流石に平日は動きが鈍いのだが、それでも流石ベテラン勢というべきか、それなりのペースでクリアが続く。それでも項目のランダム性に泣かされて、イベント最初の土曜日、その午前中の時点で、まだ有効になっている項目は1つも無かった。


「というかそろそろ悪意がありませんか。出てくる項目が全部人間種族なんですけど。竜族はともかく、兎や鳥ぐらいは出てきてもいいのでは?」

「完全同意っすね。なーんで妖精族含む精霊系の種族まで弾かれるんすか。つーか精霊と契約してたら精霊の分も同行者枠でコストがかかるとか聞いてねーんすよ」

「かといって精霊を置いて突入すると、内部には精霊が全くいなくて魔法が使えなくなるんですよね。分かっていますが本当に厄介な」


 という、微妙にゲーム初期の事を思い出しそうな謎の偏りはともかく。司令部曰く、突入者の装備や種族から項目が選ばれるのではないか、との事だし。土曜日に入って、一気に攻略ペースが上がった。

 生産者も大勢ログインするからな。最前線からすれば格落ちで、最前線の装備を作れる職人からすれば簡単に作れるって言っても、一式作るにはそれなりに時間がかかる。消耗品と違って、錬金釜や「小さな模造の魔臼」で増やすって訳にはいかないから。

 だから平日では素材を作ったり大量生産の準備をしたりして、まとまった時間の取れる週末で一気に作る、って生産者も多いだろう。まぁそうだな。召喚者プレイヤーの稼働率が高い時の方が、何にしても売れやすいだろうし。

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