第2373話 70枚目:仕様確認

「そんな事だろうと思いました」

「本当に「第三候補」の嫌な予感は当たるであるなー」

「もうちょっと良い予感で当たってくれませんかねぇ本当に」


 確かに当たらないよりかはいいけどさぁ。

 等と言っている現在、縦長の大部屋を大体調べて、その中心まで移動してきたところだ。ここまでの合計経過時間は10時間。加速状態だとは思うが、そろそろ一般召喚者プレイヤーは疲労で動きが鈍る頃だ。

 この下の階層を探索している時点で少しずつ仮眠はとっていたし、今も探索と移動をしながら休んでいる人はいるんだが、それはそれとして私と「第一候補」で、部屋の中心を調べに来た。


「しかしこの陽炎のようなものが出る、という事は、これ、破壊不可能なんでしょうね」

「少なくとも、向こう側が空の間は無理であろうな。壊せそうな場所は調べておくであるが」

「私と「第一候補」が揃っていてこの攻略ペースなんですから、住民の仲間だけだともっと時間がかかって当然では?」

「それもそうであるなぁ。一体どういう仕組みになっているやら……まぁ向こう側に進めぬ以上は、考えても分からぬ事であるが」


 で、その中心に当たる場所に近づくと、こう、部屋を2つに分ける形で陽炎のようなものがあるのが見えるんだよな。領域スキルも通っていないし、これは破壊不可能なやつなんだろう。

 非常に見辛いのだが、その向こうにはまだ階段も扉も無いし、動く姿も見えない。だから恐らく、レイドボス「狂い崇める外法の禍壁」の体力バー(下段)が残り3割を切った時に隔離されたと思われる住民の仲間達は、まだここまで辿り着いていないんだろう。

 かといって、こちらから出来る事は思いつかない。この部屋も天井まで調べたらしいんだが、本当に何も無いみたいなんだよな。もちろん、領域スキルの影響下で攻撃してみてはいるんだが、どこも崩れる様子は無いらしい。


「まぁそれはそれとして、一応確認だけはするんですが」

「うむ?」


 なんて言いつつ旗槍を背負い、その陽炎のようなものを思い切り殴りつける。……変化なしか。これでヒビの1つでも入ったらそのまま破ってやろうと思ったのに。


「……無茶をするであるなー」

「あの隠し通路だって、攻撃が効いていないエフェクトを出していましたからね。一応です」

「まぁそれはそうであるが。……それにしても、確かにこちらとあちらでは、同じ場所でも難易度が大きく違いそうであるな」


 そうなんだよな。具体的には、私と「第一候補」の領域スキルが強すぎるんだ。もし住民の仲間側に『勇者』がいたとしても、このペースで進めてはいないだろう。あのオート通路崩しは流石に再現不可能だろうから。

 何らかの形で支援できればいいんだが、わざわざ分断した以上は相互で干渉できるような仕掛けはないだろうしな。いやこの仕掛けは両方が同じ部屋に辿り着かないといけないんだから、出来なくはないのかもしれないけど。

 それに、ただここで何もできないままに反対側の到着を待つっていうのは時間の無駄だ。……いやまぁ、だからこそ経験値が美味しいっていう可能性も無くはないんだが。


「とりあえず今の所、向こう側の様子は全く分からないんですよね?」

「で、あるな。何割かは2つ以上下の階層を再探索し始めているようであるが」

「私達が戻る訳には行きませんからね……」

「ここで領域スキルを維持すれば、この部屋の仕掛けが弱まったりこの壁が突破できるようになるやもしれぬからな」


 待機も大事なお仕事だから仕方ないな。

 にしても、皆大丈夫だろうか。私は平気な程度の負荷しかないとはいえ、確実にモンスター側の影響は出ているんだし。領域スキル無しだと、いつもの状態異常の積み込みを防御するのも難しい筈だ。

 攻撃を食らわなければ発動しないとはいえ、実質ワンミスで即死は心臓に悪いよ。少なくともここに来てる時点で全員テイム済み大神の加護付きとはいえ。

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