第2374話 70枚目:協力構造

 そういう訳で、私と「第一候補」は一旦進めない大部屋の端で待機。そして領域スキルを展開し続ける事で、部屋そのものの仕掛けの緩和を狙う。

 他の召喚者プレイヤーは下の階層、は主に大型の鎧付きモンスターが面倒なので、更にその下の層を探索だ。やっぱりあの隠し通路のブロックは武器スキルの経験値が美味しいよな。

 掲示板も使えないので大変暇である。うちの子もいないのでブラッシングも出来ない。その暇と心配を込めて強めに領域スキルを展開し続けていると、どうやら司令部に何か報告が入ったようだった。


「どうやら、ある程度の相互協力が可能だったようです」

「……まぁここで潰し合うのが既定路線でしょうからね……」

「潰し合わされるために協力できるというのも複雑であるなぁ」


 という私と「第一候補」の感想はともかく。どうやら念の為という事で下層へ下層へと戻っていっていた召喚者プレイヤーが、未探索領域にも関わらず、既に開いている通路と小部屋のセットがあった、と報告を上げたようだ。

 階層で言うと12階層目だったらしく、しばらく見ていると、その既に開いている通路に繋がったこちらの探索範囲の先でブロックが勝手に崩れ始めたらしい。

 それ以上はまだ観察中だが、ブロックが崩れていく様子を見ているだけだと柱も出現しなければ鎧付きモンスターが出現する事も無いようだ。しかし、こちらから手を出すとちゃんと柱も鎧付きモンスターも出現するときた。


「なおかつ、しばらくすると隠し通路が暴かれる位置が上の階層に移ったようです。このことから、ある程度あちらとこちらのマップは連動している可能性が高いと推測。階層移動の方法をあちらも気付いたと判断して、その補助に入る事にしました」


 とはいえ、13階層目以降であれば、私と「第一候補」が揃っている必要はない。流石に柱を出す部分はあっちがやらないとダメなようだが、小部屋を探し当てるのもなかなか大変だからな。

 それに現在位置が分かっている「誰か」の内、一番下にいるのがその動きを確認できた相手である。合流して一緒に行動するというのはあちらも変わらないだろうから、それ以下に勝手に崩れるブロックが無い、つまり探索している住民の仲間がいなければ、無事全員合流できるでしょう。

 なお司令部の人は、ブロックをわざと文字の形に崩すことであっちと連絡を取ろうとしているらしい。いやまぁ1㎝角のブロックがびっしり並んでるんだから、文字の形にも出来るだろうけど。


「レイドボスが、そんな抜け道みたいな方法とはいえ、ここまでしっかり分断した相手との連絡を許しますかね」

「まぁ何事もやってみなければ分からぬからな。何より、情報がしっかり伝わっていれば、この大部屋の突破が素早く行えるであろう」


 それはそう。

 まぁ方針が定まったのなら善は急げって事で、既に攻略した場所を通って私は14階層目、「第一候補」が15階層目に移動する。ここから、推定あっちの進捗状況に合わせて上がっていく予定だ。

 魔法陣の起動とそれによる柱の出現、及びその柱から出てくる鎧付きモンスターと、柱そのものの撃破はあっちがやる必要がある。なので、一旦領域スキルの展開範囲はぐっと抑える事になる。


「まぁ抑えると言っても、既に迷路はパターン化していて、どこが行き止まりでどこが小部屋かが大体読めるようになってますし」


 油断は良くないんだが、楽ではある。あとは私の制御力の問題だな。うっかり魔法陣を起動させてしまうと、こっちで柱及び鎧付きモンスターが出現するだけではなく、うちの子を含む住民の仲間が先に進むのが遅れるから。

 もちろん一緒に隔離されて合流できた召喚者プレイヤーの中には『可愛いは正義』所属の召喚者プレイヤーも『巡礼者の集い』所属の召喚者プレイヤーもいる。ブロック相手ではちょっと過剰戦力な護衛付きだから、何なら領域スキルで崩す必要はないんだよな。手数が十分だから。

 まぁでも、あのブロックが、ドザザーっと崩れていくのはなかなか爽快感がある。……ほんと、やり過ぎからの魔法陣起動だけは避けないとな。

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