第2372話 70枚目:大部屋

 探索方針が決まって、ある意味無駄なく部屋の攻略と探索が進んだ結果。


「巨大な扉つきの柱ですか。……まぁ、既に鎧付きモンスターは出現して撃破されてますからね」

「で、あるな。もっとも、それで外に出られるかどうかは不明なのであるが」


 別の小部屋があった位置の部屋を攻略すると、その中心にでっかい柱(両開きの扉つき)が出現したようだ。触ると勝手に開いて行ったその中には、上に続く螺旋階段があったらしい。

 しばらく放置したり召喚者プレイヤーが部屋から出たりしても扉には変化がなかったという事で、ここまでの天井に開いた穴と同じく、次の階層へ行くためのものだろうと結論が出た。まぁそうだな。

 まだこの階層を完全に探索し切った訳では無いが、流石に未探索領域に何かある可能性は低いって事で、例によって私を中心に素早い召喚者プレイヤーで集団を作って、その階段を登ってみた訳だ。


「これはまた、広いですね……」

「こっちが本当の大部屋では?」

「そんな気がする」

「端が見えんのだが?」

「望遠鏡貸してやろうか」


 その先にあったのは、さっきの大部屋だと思っていた場所が小部屋に思える程、私の視力でもギリギリな天井と左右の壁が無ければ外に出たかと思うような部屋だった。

 どうやら微妙に縦長になっているらしく、反対側は構造物と同じ色をしてるって事しか分からない。だがまぁとりあえず部屋に入ってすぐどうこうっていうのは無いようなので、司令部の人や「第一候補」にも上がって来てもらう。

 で、あまりに広くて何も無い部屋を、それでも一応探索しておこうか、と召喚者プレイヤーが組を作って動き始めたところで。


「……少し待つが良い。加護を強めておいた方が良さそうである」

「領域スキルの負荷は変わりませんが」

「質が違うのであるよ。ここにあるのはこちらを害する、排するというよりは、誤魔化し、惑わせ、誤らせるものである」

「あー……探索に行って戻ってきたら待機組がモンスターに見える、とかいう感じの」

「で、あるな」

「エグい」

「酷い」

「まぁレイドボスだし……」


 ちょっと遅れて部屋に入った「第一候補」からストップがかかった。なるほど。ここで方針を変えて同士討ちを誘って来るか。

 加護を重ね掛ける程度なら今の状態でも出来るらしく、「第一候補」はほいほいと探索に出る召喚者プレイヤーの加護を強化していった。そして加護の強化を受けてから部屋のあちこちに散っていく召喚者プレイヤー達。

 こっちから見ている分には本当に何も無いんだが……そうだなぁ。


「一応私も供給能力を開放しておきます。その水準は最低限になるでしょうけど、その分範囲は広げておきます」

「ふむ?」

「まぁ、一応ですよ。一応」


 展開を続けている領域スキルの内、【調律領域】だけ出力を下げて範囲を広げる。装備補正や周りに召喚者プレイヤーがいる事で結構な広さが効果範囲に収まる筈だが、流石に部屋の向こうには届かないな。


「「第三候補」の一応は、大体の場合役に立つであるからな」

「どうしてこうも悪い予感だけが当たるんでしょうね。いえまぁ当たらないよりかはずっといいんですけど。被害を抑えるという意味で」

「で、何の為の「一応」であるか?」

「……『勇者』は弾かれた可能性が高いとしても、住民の仲間が1人もいないというのはおかしいと思うんですよ」

「察した」

「あー」

「人の心とか無いんか運営?」


 この部屋は縦長だ。ものすごく広いから、私の視力でも距離が長い方の反対側は、壁の色味しか分からない。の割に、敵の気配がほぼない。

 かつ、「第一候補」が見破った誤認もしくは偽装を押し付けてくるモンスター側からの干渉。そして全く影も形も見えない住民の仲間。

 となれば、まぁ……ここで、召喚者プレイヤーと住民の仲間で、同士討ちをさせられる可能性があるんじゃないかな、って。

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