第2364話 70枚目:分断後探索

「おや」

「うむ?」


 さてそんな感じで、テンション高く通路を掘り進めていった結果。右に曲がる通路は魔法陣付きの行き止まりだったので、左に曲がる通路を進んだ先でもう一度右に曲がり、そこで辿り着いた小部屋で「第一候補」を発見した。

 なお魔法陣は通路にあったブロックを1つ残らず消すと消えてしまったので、【盾】スキルを上げるためにわざと残しておくべきだったかとちょっと後悔したのは秘密だ。


「なるほど。途中からやけに柔らかくなったと思ったら「第一候補」の領域スキルが効いていたんですね」

「隠し通路の類だとは思っておらなんだが、「第三候補」が我のところへ1人で来たという事は、他の誰とも合流は出来ておらぬようであるな」

「まぁ間違いなく私とあなたが一番厳重に隔離されているでしょう」

「それはそうである」


 どうやら神の奇跡が願えない状態らしく、「第一候補」は隔離先である小部屋を動かず、助けを待つ事にしたようだ。まぁそうだな。私が探索した限りではモンスターが出てきたのはあの魔法陣だけだが、鎧付きではあった。魔法が使えると言っても、奇跡無しだとキツいだろう。

 という訳で、そこからは「第一候補」と一緒に行動だ。やってる事は一緒なんだが、実入りがあるっていうのは本当にいいなぁ。体を動かしてるーって感じもするし、何よりブロックが砕けて消えていくのが派手で良い。

 そこからは時々魔法陣付きの行き止まりにぶつかりつつ……「第一候補」がいるので、モンスターの召喚は我慢した……通路を掘り進んでいく。私は旗槍を背負っているし、「第一候補」も領域スキルは展開しっぱなしのようだから、ブロックがとても柔らかい。


「まぁ柔らかいと言っても、固い物を叩いた反動は来るんですけど」

「本来であれば、「第三候補」の攻撃に数撃も耐える、という時点でだいぶ頑丈な筈であるのだがなぁ」

「領域スキルがいくつ重なってんだって話ですからね。私は武器の分まで含めて4つ重ねていますが、「第一候補」は?」

「我も全力であるからな。種族特性含めて、7つである」


 出力だけでも上から数えた方がいい展開者が、2人一緒に行動している上に、11も領域スキルを重ねていればそりゃ柔らかくもなるわ。むしろちゃんと攻撃するまでは耐えてるって時点でかなり頑丈というべきだろう。

 ま、柔らかくても経験値に変化はない。むしろ柔らかくてさくさく壊せる分だけペースは上がっている。いっやー、武器スキルの経験値が美味しいなー!

 もちろん脱出はする。脱出するつもりは全力である。のだが。


「それにしても、ブロックを壊して地道に進まないと分からない迷路というのは難易度が高いですね。私と「第一候補」は絶対どうしたって一番難易度の高いところに隔離されてるでしょうし」

「楽しそうであるなー」

「武器スキルの経験値がとっても美味しくて。「第一候補」も武器があったら参加した方がいいですよ」

「ほう。では右に寄ってもらえぬか?」

「いいですよ。ギリギリ2人なら並べるでしょうし」


 ちなみに「第一候補」、奇跡の武器を扱ったり、武器による祭事をする関係で、武器スキルを全種類取ってるんだってさ。またレベル上げが大変になる取り方をしてるな。

 ただ中の人の運動神経がいいのか、スキルレベルを見ながら武器をちょいちょい変えつつブロックに攻撃する様子はなかなか格好いい。私の方に攻撃が飛んでくる事も無いし。


「なるほど、これは確かに良いであるな」

「脱出する為には通路を掘り進めないといけませんからね。間違いなく難易度の高い場所にいる以上、脱出に時間がかかるのは仕方ないですし」

「くはははは、まぁそれは確かに仕方ないであるなぁ。こうやって脱出の為の努力はしているであるし」

「私だって全力で隔離しますからね。それはそれとして、領域スキル無しだと色々大変でしょうし、全力で戻るつもりではいるんですけど」

「で、あるな。早く戻るという点において我も完全同意である」


 まぁその早く戻りたいっていうのと、脱出に時間がかかるっていうのは別の問題なんだけどな。レイドボスから全力で妨害されるだろうし。

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