第2365話 70枚目:脱出手順
私が「第一候補」を見つけるまでにかかったのが大体1時間ぐらい。そして「第一候補」も一緒にブロック崩し、もとい通路を掘り進めるのに参加し始めてペースが劇的に上がり、それでもそこから2時間ぐらい進んだだろうか。
「出れる気配がありませんね」
「方法論を間違えている気もしてきたであるな」
「まぁ他に出来る事もありませんし、難易度が高すぎるだけだと思うんですけど」
「それもそうであるな」
何か間違えてるんじゃないかな、というのは私も思ったのだが、経験値が美味しいもとい他に出来そうなことが見当たらないしな。小部屋に戻って領域スキルを全力展開したまま維持っていうのは既に「第一候補」がやってたし、それで合流できたのは私だけだ。
それに、通路と小部屋の組み合わせで分かった範囲には領域スキルを展開したままだから、変化があればすぐに分かる。今の所、通路が組みかわったり部屋に何かが出現したり、そういう事はないようだし。
通路もしくは迷路の探索は順調だ。もっとも今の所、「第一候補」と私がいた場所以外の小部屋は空だったし、通路も行き止まりが多い。時々勢い余って行き止まりの魔法陣を起動してしまう事もあったが、無事に倒すことも出来たしな。
「……本来は時間経過でモンスターが出現し、それから逃げ回りつつ探索する、という形であったような気がしてきたであるな」
「私と「第一候補」をセットで放置する方が悪いでしょう」
「第一候補」の領域スキルが実質バフとデバフになっているので、パリィしてからの衝撃を通すアビリティ、という1コンボで沈むんだから楽なものだ。私だけだともうちょっとかかったんだが。
種族的に最高峰の前衛と後衛だぞ。少々頑丈な鎧を纏っていたところで、並のモンスターで勝てる訳がない。まぁ一緒に隔離してその分だけ壁をしっかりする方が楽だったんだろうけど。
実際、迷路の仕掛けは機能不全を起こしていても、脱出できそうな気配はないからな。出力の高い領域スキルの保持者を他と切り離す、というのは戦略的に大正解なんだが。
「ところで「第三候補」」
「なんでしょう「第一候補」」
「先程気付いたのであるが、この部屋の天井も崩せそうではないか?」
「天井が?」
で。鎧がブロックに戻り、それが再び柱になろうとするのを阻止したところで、「第一候補」がそんな事を言い始めた。私も天井を見上げるが、特に何か変わったところがあるようには見えない。
小部屋に来てすぐ、周囲を一通り攻撃してはみたんだが……いや、あの隠し通路も、壊せるのに壊れないエフェクトが出てたな。それに感知力や探知力は「第一候補」の方が上だ。
「うむ。ちょうど柱があった場所であるな。もしかすると、柱が出現するまでは崩せぬのかもしれぬ」
「……なるほど」
それに、そう続けられるとあの行き止まりの魔法陣が、うっかりとはいえ発動しやす過ぎる事にも筋が通る。それに、今戦っているレイドボス「狂い崇める外法の禍壁」は、壁といいつつ柱の形をしている。
だったら、上下移動があるのは妥当だろう。平面をうろうろしているばかりではどこにも出れないのも道理だ。もちろん、端があるにはあるだろうが、相手は空間をいじる能力に長けてるからな。
という事で空気の足場を蹴り、天井の中央、柱があった場所にレイピアを叩き込んでみた。
「当たりですね。ところで、床には何も変化がない、でいいんですか「第一候補」」
「うむ。変化があったのは天井だけである」
「ならば、私達が最も脱出難易度の高い最下層にいる、という解釈で、ひたすら上を目指すことになるのでしょうか」
「まぁ実際はどうか分からぬがな。ひとまず、進めるだけ進むとしよう」
ちょっと地図を埋めてみたくもあるが、時間がどれだけかかるか分かったもんじゃないからな。
何しろ今最優先なのは脱出であり、他の
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