第2362話 70枚目:分断経過

 スキルアシストとステータスの暴力を全開にすれば、私だって一点をレイピアで狙い続ける、なんて芸当も出来る訳だ。もちろん現実では出来る訳がない。片腕でレイピアを肩の高さに持ち上げ続けるだけで数分も持たないだろう。

 流石ゲーム、と思いながら壁に穴をあけていく。というか、拡張していく。どうやらこの穴は通路の形までしか広がらないようで、高さは3mのままだが、幅は2m弱ぐらいだった。

 しかし、一度に攻撃できる単位が1㎝四方っていうのはちょっと小さすぎるんじゃないだろうか。しかもこの……壁材というかブロックというか。1㎝角の立方体、どうやらダメージを周囲に伝播もしくは拡散する性質があるっぽいんだよな。


「まぁだから、領域スキルによる面攻撃になっていた時点では、その中心になる部分にダメージが蓄積して壊れた、という事のようですが……」


 なので、無理に通路全部を壊すことはせず、中心から周囲へ、攻撃しやすい位置を優先的にレイピアで狙い、残った塊は放っておいて領域スキルのスリップダメージで壊すことにした。

 しかしこれがまた、丈夫なんだ。レイピアとはいえ、私の攻撃力で3~5発必要ってちょっとした大型モンスター並みだぞ。数字だけで言うんなら。もちろん刺突属性の攻撃で硬い相手を攻撃してるんだから、思いっきり減衰が入ってるっていうのもあるだろうけど。

 ちゃんと通路の形に開いてから進んでるのもあって、まだ1mも行って無いんじゃないかな。流石に腕がしんどくなってきた気がする。いや、スタミナ的にはまだまだ全然問題ないんだけど。


「硬い相手を攻撃すると、衝撃が返ってくるのは元からの仕様。それに加えて、若干のダメージ反射もあるっぽいですね。面倒な」


 お陰でレイピアも既に何本か折れている。早いんだよな。確かに旗槍程出番がない分だけ強度も低いけどさ。やっぱり訓練だけだと性能が上がりにくいんだってさ。

 かといって、私が近距離用の武器であるレイピアを使うような状況だと、正直その一歩手前で旗槍をぶん回す方が早くて確実だからな。サブウェポンの悲しみである。……現状のように、必要な時が来たらちゃんと使うんだけど。

 ガガガガガ、とかなりの勢いで壁を構成するブロックを攻撃しているんだが、数が多いし耐久度が高いので、中々進んでいかない。上の方は出来るだけ壊すようにしているが、足元は割と放っておいてるし。


「というか、上の方に残っているから時間がかかるのでは?」


 ちょっと戻って、空気の足場に乗って上の方を壊してくるか。私の身長だと、高さが3mある通路の天井には届かないんだよな。それぐらいないと高身長召喚者プレイヤーは当然として、旗槍も通らないんだけど。

 という訳でうろうろしていると、余計に進まない。の、だが。


「いやーしかし、これまでどれだけ武器スキルを放置していたかが良く分かりますね」


 ははは本当にな。ティフォン様達の試練だと、接近戦ってなると殴った方が早いかがっつり旗槍を使う相手だからな。レイピアの出番は思った以上に無かったんだ。

 もちろん普段の訓練はしていたよ? 的を相手に動きを確認するぐらいはしていたんだが、それだとスキルレベルはほとんど上がらないんだよな。どっちかっていうとプレイヤースキルの訓練になるから。

 まぁ私はその訓練も、ほぼほぼずっとアシストとステータスの暴力でゴリ押してたんだが、ともかく。


「モンスター入りの氷が大人気になる筈です」


 何というか、びっくりする勢いで武器スキルが上がっていく。経験値が入れ食いだな? 一応レイドボスを相手にしてるって事になるんだろうか?

 分断された以上、エルルを始めうちの子が私の事を全力で探しているだろうし、私としても早く合流したいのは嘘ではないんだが……これは、もうちょっとここにいて、がっつり経験値を稼いでおきたいかもしれない……。

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