第2361話 70枚目:残り3割
レイドボス「狂い崇める外法の禍壁」の体力バー(下段)が半分を切り、本体への攻撃が始まってから供給能力を開放し始めたが、一応負荷はマシになっている。
相手の体力が減る程に領域スキルの負荷がマシになるのは、影響度というものの事を考えれば不思議ではない。まぁその分だけ、瀕死になったら一気に負荷が増す可能性っていうのもあるんだが。
そこだけは大変レイドボスらしく、領域スキル×2のスリップダメージに加えて集中攻撃も受けているのに、体力バー(下段)の残りが半分から3割になるまでに、4時間もかかってしまった。
「いやまぁ絶対値を考えれば早い方でしょうし、周りのモンスターの出現ペースを考えると、これ以上には出来なかったでしょうけども……」
で。体力バー(下段)の残りが3割になったという事は、次の行動変化もしくは特殊行動が来るって事だ。事ここに至るまで、散々ギミックだらけで厄介だった相手の、割と瀕死に近い行動だから、警戒はしていた。
空間操作能力が高い上に、戦力を大部屋の中央と外側に湧けるように持っていかれたって時点で
だから、3割に辿り着いた瞬間、私ですら立っていられなくなる程の揺れが襲ってくるのは、まぁ、大体分かっていたんだ。空間的な揺れか物理的な揺れかは分からなかったが、たぶん両方だったんじゃないだろうか。
「……こうきますか」
分断されるとは思っていたし、領域スキルの展開者って事で私が目をつけられている可能性は十分にあった。そもそも旗槍の付与スキル【旗印】で私はヘイトを稼ぎやすい。だから何かの手段で、ピンポイントで狙われるのも覚悟していた。
だから揺れと同時に供給能力を止めたし、こける前に空気の足場を出してギリギリ耐えた。なので今現在、周囲を見回す余裕がある訳だが。
まさか、何も無い小部屋に閉じ込められるとは思ってないんだよな。
いやまぁ、邪魔だと思うよ。邪魔だと思う。だから隔離するのは正直納得しかない。んだが、これは流石に無いんじゃないかなって。
一応周囲の壁(と天井と床)に攻撃含む各種スキルを試してみたんだが、仕様としては通常の構造物と同じらしい。つまり、何のスキルも通らず、破壊不可能って事だ。
領域スキルの出力は落としていないんだが、やはり壁で止まっている感覚がある。負荷は変化なし。セット装備のスキルによる補正は無くなったが、魔法も使っていないので、自然回復力と釣り合うぐらいだ。
「当たり前のように
つまり、暇なんだよな。せめて周りの壁に、ドット以下でもいいからダメージが通るなら忙しく出来るんだけど。物理でも魔法でも、攻撃が通ってない時の特殊エフェクトが出るんだよなぁ。
いやまぁ、流石にこの小部屋……3m四方ぐらいか? の中でモンスターと戦闘っていうのは無理があるだろうけども。旗槍を振るにも気をつけなきゃいけないぐらいの、立方体でつるりとした壁に囲まれた小部屋だから。
だからたぶん、救出待ちの為の場所なんだろうな。外から何とかしてくれないとどうしようもないタイプ。周りの状況は分からないが、私だけが消えたんならエルル達は絶対気が付くだろうし。
「まぁ全員がこういう場所に閉じ込められて、外側にいた人達と応援に来る人達に託すしかないという可能性もあるにはありますが」
それにしたって、全く攻撃が通らないっていうのはどうかと思うんだよ。削らせろ。暇だから。そもそもオリジナルだって、中心部の部屋が封鎖された時は忙しくしてたってのに。
いや私が閉じ込められたこの部屋が特別頑丈って可能性もあるんだけども……。なんて思いつつ、それでも領域スキルは無理しない程度の出力を維持して、部屋の外に広げられないかと部屋の壁に押し付けてた訳だ。
バギッ
「ん?」
これは通らないのを分かった上で、神の力補正を上げる舞でも舞っておくか? と思ったところで、何かが砕ける音が聞こえた。
周りを見ると、背後に当たる壁の一部が四角く欠けている。当然その分だけ領域スキルを広げられている訳だが……その周囲には、どうやら、微妙にだが領域スキルが通っているらしい。
「……。なるほど? ちゃんと狙えば脱出までの時間を短縮できる仕掛けぐらいはあってしかるべきですもんね?」
流石に旗槍では狙いにくいが、それならそれでレイピアを使えばいいだけだしな。何より、やる事があるっていうのは良い事だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます