第2315話 70枚目:予想外

 無事不死族のジンペイさんは自分にかけられていた罠の魔法を無効化出来たので、毛布でぐるぐる巻きにして私がエレベーター前まで運んだ。ここからは治療の時間だ。

 不死族の人は分類で行くとアンデッドだが、正規の種族なので回復魔法は普通に効く。骨でもご飯食べられるのは種族の神秘だな。で。私の魔力的出力で最高位の回復魔法を重ね掛けた上で、私用に持ち込んでいた料理に手を加えて食べやすくしたら、どうなるかっていうと。


「不死族って弱ると骨になるんですか?」

「単に内臓を含めた肉という肉が削ぎ落された上で、回復できなかっただけだね」

「うーんこの。最低なのは分かってたっすけど、その最低を更に更新していくっすねー」


 ……思ったより回復したな。と思ったのはともかく。さらさらな金髪に明るい青緑色の切れ長な目をしたイケメンお兄さんになった、のもまぁともかく。その耳が尖ってるのは、ジンペイさんってもしかして元森人族エルフ

 いや例外はある。不死族って普通に同族同士の子供として生まれる場合もあるけど、あまりにも出生率が低すぎるから、こう、弟子とか気が合った友人とかを引き入れる事があるんだよ。それで不死族になったんだろうなとは思うんだけど。

 んんん? けど、なんだろう、この、うーん。もうちょっとでこう出てきそうな感じなんだけど、


「……薄浅葱。そう、薄浅葱色の目。それだ!」

「うお、先輩突然どうしたっすか!」


 首を傾げてじーっと見ている私の視線が流石にうるさかったのか、何だい? という感じで首を傾げるジンペイさん。その仕草でようやく思い出した。それだ! 目の色綺麗ですねって言ったら、薄浅葱って言うらしいよって言ってた! そう!


「ジンペイさんあなた、双子の弟か兄がいますね!?」

「え? あ、いや、確かにいるが……もしかして、どこかで会ったのかな?」

「うわぁ。たっぷり怒られて下さい。何なら泣かれて下さい。大体モンスターのせいですけど」

「え、ちょ、ちょっと待ってくれ。確かにこんな目に遭って閉じ込められていた分だけ離れていたのは確かだろうけど、不死族にとって数年程度は」

「1万年は「程度」ですか?」


 は? という感じで流石に処理落ちフリーズしたジンペイさん。インベントリに予備の服を入れていたらしく、既にザ・魔法使いなローブに着替えているがそれでも1万年というのは予想外だったようだ。まぁそれはそう。

 なるほど。と、あーあ。という感想を同時に得て、確認するだけして満足したが、フライリーさんは分からなかったらしい。くいくい、と袖を引っ張られた。


「先輩、何で双子の弟か兄っすか?」

「どこかで見た気がしたんですよ。特にその目の色。森人族エルフの方の中でもかなり珍しい色の筈で、私が知ってるのは1人だけです」

「ってーと」

「あれです。クレナイイトサンゴ関連の大海戦。あの時「手遅れ」の見極めに参加していた。……そう言えば、自分から森人族エルフだとは名乗っていませんでしたね」


 なーにが「長生きしてれば色々出来るようになるものだよ」だ。ガッツリ最強種族じゃないか。絶対何かあるとは思ってたが、こう来るかよ。

 あの時普通に参加してたって事は、あの人自身は空間の封印に参加も巻き込まれもせず、通常の状態で世界を放浪してたって事だ。つまり、1万年の間、普通に生きてきたって事だな。不死族ならあり得るだろうが、あんなところに世界規模スタンピートの生き証人がいるとか誰が思うよ。

 ん? という事はまさか、あれか? 騒ぎに自ら首を突っ込んでいったのは、もしかして行方不明のジンペイさんを探し回っていたからか? うーわぁ。


「…………あ!? もしかして、あれ、あの、【鑑定】の限界突破3回してた!?」

「そうそう。その前のマーレイ捕獲チャレンジの辺りから参加してた」

「あー! あーあーあーいたっすねそう言えば!? あれ、って事は、え、あ、あぁ、あー……。あ、はい、完全に理解したっす。盛大に泣かれて怒られればいいと思うっすよジンペイさん」


 まだ処理落ちフリーズから戻ってこないジンペイさんに、私と全く同じことを言うフライリーさん。だよな? 全てを理解してしまえばそうなるよな?

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